総務省がこのほど発表した2015年「労働力調査」(速報)では、役員を除く雇用者5284万人(前年比44万人増)のうち、正社員は3304万人(同26万人増)、非正規社員は1980万人(同18万人増)とどちらも増えたことがわかった。正社員はリーマン・ショック前の07年に34万人増えて3449万人となってから、08年以降は7年連続で減少が続いたが、景気拡大に伴う雇用情勢の改善によって企業の正社員志向もようやく回復、8年ぶりの増加に転じた。(報道局)
非正規社員は05年から一貫して増え続け、リーマン・ショックによる大量リストラで09年だけは38万人減少したものの、それ以後は再び増加し、13年は93万人増、14年も56万人増の急ピッチで増え続けた。15年の18万人増は“一服感”を漂わせる数字だ。男女別では、男性の634万人(同4万人増)に対して、女性は1345万人(同13万人増)となり、女性の増加が著しかった。
15年の非正規をさらに雇用形態別にみると、パート・アルバイトが1365万人(同18万人増)で、非正規に占める比率も69%と圧倒的なボリュームになっている。次いで、契約社員が287万人(同5万人減)、派遣社員が126万人(同7万人増)、嘱託が117万人(同2万人減)となり、派遣社員は増えたものの、比率は嘱託と同じ6%程度で、非正規の中でも少数派であることが改めて確認された=グラフ。
さらに、年齢別にみると、男性で最も多い年齢層は55~64歳の152万人で男性非正規の24%を占め、次いで65歳以上が148万人で23%。両者を合わせると300万人、47%と半数近くを占める大集団に膨らんだ。これに対して、女性は45~54歳が330万人で25%、35~44歳が320万人で24%を占め、両者を合わせたミドル層が半数近くを占めている。また、男女とも65歳以上が16~17万人増えており、非正規で働く高齢者が急増していることが明らかになった。
一方、15~34歳の若年層のパート・アルバイト(フリーター)は167万人(同12万人減)と過去10年間の最低数を記録。リーマン・ショック以後は170~180万人で推移してきたが、人手不足を背景に15年は一気に減少した。
「同一労働・同一賃金」は就労実態まで切り込んで検討を
年収面では、男性非正規で最も多かったのは100~199万円が31%を占め、100万円未満の27%が続いた。女性の場合はさらに低く、100万円未満が半数近い45%を占めており、次いで100~199万円が40%となり、両者だけで85%にのぼった。
こうした傾向はここ4年ほどほぼ同じで、高齢者のパート・アルバイトが急増していることも合わせると、定年後に短時間勤務で社会とのかかわりを保つ高齢者の増加が主要因ではないかと推測される一方で、高齢者のワーキングプアがどの程度いるのかははっきりしていない。
政府は、安倍首相が音頭を取って「同一労働・同一賃金」の実現に向けた動きを見せ始めているが、高齢者パートも含む統計データなどを基に議論を進めることが適切かどうか、その就労実態まで切り込む詳細な検討が必要になりそうだ。