来春卒業の大学生、大学院生に対する企業の採用選考活動が1日、解禁された。今年から経団連傘下の企業は「学業優先」を理由に、選考活動を8月から、内定を10月からと、例年より各4カ月遅らせることを申し合わせたことから、就職活動は「短期決戦」の様相を強めている。しかし、すでに内定を出している企業の中には「就活を終わらせろ」と学生に迫る“オワハラ”の横行も懸念されるなど、採用現場では大きな混乱が懸念される。(報道局)
申し合わせの影響により、リクルートキャリアが発表した7月1日時点の大卒内定率(確報)は49.6%で、前年同月の71.3%より21.7ポイント低い。それでも、半数近い学生がすでに内定を得ており、経団連に加入していない外資系企業や中小企業に加えて、加入企業の“フライング内定”もかなりの比率にのぼっているとみられる。
企業説明会を経て、いよいよ内定へ
経団連加入企業は大企業が多く、学生の人気も高いことから、8月中には多くの企業が内々定(実質的な内定)を出し、内定率も一気に跳ね上がるとみられている。例年なら、大企業がまず内定を出し、それに漏れた学生が「第2志望」の企業に向かうというのが通例だったが、今年は逆の流れになりそうだ。
そこで問題になっているのが、内定者を逃がさないよう、学生に就職活動を打ち切るように強制する“オワハラ”。文部科学省が国公私立大学・短大の計82校(学生3934人)を対象に調査したところ、3月~6月末に学生から“オワハラ”の相談を受けた学校は68.3%に上り、前年の45.1%から急増。“オワハラ”を受けた学生も、5月の75人から7月には3倍以上の232人まで膨れ上がった。
懸念される“オワハラ”の急増
8月以降は、これがさらに急増し、内定学生を「研修」名目で缶詰にしたり、旅行に連れ出すなど、囲い込みを図る企業も増えて来そうだ。しかし、内定者を無理に囲い込むこと自体、入社後の早期離職を促進する可能性があり、企業側も頭を痛めている。
そもそも、学生側の職業意識はかなり漠然としている。内閣府は昨年暮れ、大学生・大学院生5000人を対象にした「就職・採用活動開始時期変更に伴う学生の意識等調査報告書」を発表した。その中で、「就活で不安に思うこと」(複数回答)を聞いたところ、「自分がどんな職業に適しているかわからない」という答えが49.5%で最も多かった。すでに内定者もいる4年生だけに限っても45.5%にのぼっており、半数程度の学生はどんな仕事をしたいかわからないまま入社している可能性を示唆している。
また、内定者の約半数は「定年まで内定先企業で働きたい」と考えている一方、「やりたい仕事があれば転職したい」と考えている学生も3割上にのぼっている。企業側にとって、無理な囲い込みが無駄に終わるか、場合によっては逆効果となる可能性も高い。
結局、採用活動の後ろ倒しも、大学側からは「就活期間を実質的に長引かせただけ」「オワハラの横行で、学生の心理負担はかえって増えた」などと批判する声が多く、経団連の狙い通りには進んでいないようだ。日本の雇用慣行の大きな柱だった「新卒一括採用」方式は、至るところにほころびが生じている。