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2015年6月29日

介護要員の絶対的不足、打つ手は?

見逃されがちな「予防介護」の視点

 厚生労働省が26日に発表した5月の有効求人倍率は全体で1.19倍となり、バブル崩壊直後の1992年3月と同水準に並んだ。人手不足感は強まる一方だ。その中で最も人手不足にあえいでいるのが看護・介護の分野。6月初めに日本創成会議(増田寛也座長)が首都圏の介護要員不足の見通しを公表したこともあり、介護分野の人手確保は待ったなしの課題になっている。(報道局)

 厚労省の5月の「一般職業紹介状況」によると、新規求人数の最も多かった職種は「医療・福祉」の約16.7万人(前年同月比6.3%増)で、その多数を占めたのが「社会保険・福祉・介護」の約10.7万人。求人倍率は2倍程度とみられ、首都圏ではさらに4倍程度にハネ上がるとみられている。

 しかし、6月4日に日本創成会議が発表した提言「東京圏高齢化危機回避戦略」では、東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)の後期高齢者人口は今後10年で175万人増えて、全国の3分の1を占める。その結果、介護施設が著しく不足し、介護要員も80~90万人ほど増やす必要があるという。現在、全国に約160万人の介護職員がいるが、提言は今後の大規模な要員増の困難なことを示唆している。

 対処方法としては、ロボット活用などを通じた医療介護サービスの人材依存度の低下、一都三県の連携・広域対応、地方移住環境の整備などを挙げたうえ、参考として北海道室蘭市から鹿児島市まで全国の「医療介護体制が整っている41圏域」を例示したところ、マスメディアがそこだけを取り上げて報道したことから、多くの自治体が「地方の財政負担が増える」と迷惑顔でコメントするなど、話題を呼んだ。

 実は、この提言にはもう一つ、足りない部分がある。それは現在の要介護率などをそのまま延長して将来の人数を予測したフシがあり、健康な高齢者を増やす「予防介護」の視点がほとんど入っていない点だ。従って、首都圏が大幅な介護要員不足に陥ることは必然の成り行きになる。

 シニア事情に詳しい村田裕之・東北大学特任教授も「高齢化の進展=要介護高齢者の増加=介護施設・職員の不足という視点のみで、要介護高齢者を減らす=もっと予防に注力する、という視点が欠けている」と批判的だ。では、現実はどうか。

新潟県湯沢町、埼玉県和光市の事例

 介護保険制度に基づく地域包括ケア制度では、自治体が「予防」活動を徹底して保険財政の健全化を図るという原則があり、新潟県湯沢町や埼玉県和光市といった自治体では、この原則を実践、成果を上げている。

is150629.png 湯沢町では2003年度から「ファミリー健康プラン」を実施。町ぐるみの健康プランを10年掛けて推進した結果、14年度の高齢化率が33%に達したにもかかわらず、要介護認定率は14.5%と全国平均の18.2%を大きく下回っている。

 和光市の場合は、一度介護認定を受けた高齢者でも、リハビリなどを通じて「卒業」してもらう方針を掲げ、さまざまな健康指導に取り組んだ結果、06年ごろから要介護者の認定率は一貫して下がり続け、13年度には9,6%という“驚異の”一ケタ台を記録した。大分県杵築市でも和光市モデルを導入して認定率を下げ続けている。

 こうした手法は「元気な高齢者」を増やすうえ、介護要員不足の緩和にも役立つことから、多くの自治体が健康体操の普及=写真は神奈川県藤沢市、認知症の早期発見に向けた予防・見守りなどに力を入れ始めており、ようやく全国的な効果が徐々に出始めている。

 厚労省によると、日本の場合は平均寿命、健康寿命(自立生活のできる期間)とも世界的にトップクラスだが、健康寿命が平均寿命より男性は約9年、女性は約12年短いというデータがある(10年度)。このギャップが要介護期間になるため、今後は介護要員の不足対策と同時に、ギャップの縮小が重要課題となりそうだ。

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