1月26日に召集された第189回通常国会は、序盤の要となる2015年度予算案が13日に衆院を通過し、いよいよ中盤に入る。現在、参院で予算案の多面的な審議を展開中だが、約96兆円にのぼる予算案は「衆院の優越」で事実上、4月上旬の成立が確定している。その後に控えているのが予算以外の法案だ。中盤から会期末にかけて審議されるこれらの法案は、閣議決定を経て23日までに概ね出そろった。召集前から予想された通り、大幅な会期延長論も現実味を帯びて来ているが、まずは今国会の「序盤戦」を振り返るとともに、雇用・労働関係の法案を中心に現状を整理する。(報道局)
農相辞任の余波を最小限にとどめている安倍内閣
昨秋の臨時国会は、2女性閣僚の辞任でつまずき、国会運営の主導権を失ったことなどから、政治判断で衆院解散に打って出た安倍内閣。政府提出法案の成立率が67.7%と振るわなかった分、自ら今国会を「改革断行国会」と銘打って臨んでいる。しかし、開会から1カ月ほどで「政治とカネ」の問題に絡んで農相が辞任に至り、野党に攻撃の口火を与えることになった。
通常は後任大臣の人選がうまく行かず、ほころびが拡大する傾向にあるが、辞任当日のうちに1年8カ月間にわたり農相を務めた前任の林芳正参院議員を充てることで衆院での予算案審議の流会を1日だけに抑えた。今後、衆院ほど与野党の議席に差のない参院予算委員会でどのような展開をたどるかは不確定要素が多いものの、現段階において「余波を最小限にとどめている」といった状況だ。
また、国会運営には直結しないが、4月の2015年統一地方選の結果は「中盤国会以降の勢いを与野党のどちらが掴むか」という意味で一定の注目を集めそうだ。
派遣法改正案、5月までの審議入り目指す政府
政府が提出を予定している厚生労働省関係9法案と、他省庁の所管または共管の雇用・労働関係2法案について整理すると、まず厚労省関係は(1)戦後70年を念頭に置いた戦没者の妻らに対する特別給付金支給法改正案、(2)国民健康保険法改正案、(3)厚労省所管の独立行政法人改革推進法案、(4)労働者派遣法改正案、(5)勤労青少年福祉法改正案(若者雇用促進対策法案)、(6)社会福祉法改正案、(7)医療法改正案、(8)労働基準法改正案、(9)確定拠出年金法改正案。
他省庁の所管または共管の雇用・労働関係は、女性活躍推進法案(内閣官房・内閣委員会)と外国人技能実習に関する新法(厚労、法務両省共管・法務委員会)――の2法案となる。これら計11本の法案は、23日までに大半が閣議決定され、国会に提出、または3月31日までの提出準備が整った。
このほか、提出検討中の法案としてGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を改革する年金積立金管理運用機構法案など3本あったが、今国会への提出は見送られる公算が高い。
雇用・労働関係法案の状況を個別にみると、重要広範議案に指定された労働者派遣法改正案は3月上旬に与党審査を終えて13日に提出。政府は、5月までの審議入りと9月1日施行を目指している。
労働基準法改正案は3月2日に労働政策審議会が要綱案を「概ね妥当」と答申。31日にも閣議決定し、法案提出の運び。審議入りの日程は後半国会の流れ次第だが、会期延長があったとしても成立にこぎ着けられるかは未知数だ。
勤労青少年福祉法改正案(若者雇用促進対策法案)は、3月17日に提出された。同法案は与野党対決法案ではないことから、参院先議で審議入りの公算が高い。
外国人技能実習に関する新法は、3月6日に提出済み。審議は法務委員会が中心となるが、厚生労働委員会との合同審査となる可能性も完全には消えていない。
女性活躍推進法案は2月20日に提出された。昨秋の臨時国会では、衆院でほぼ審議を終えて採決寸前まで進んでいたが、解散で廃案となった。今国会では5月中の成立を目指している。
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