スペシャルコンテンツ記事一覧へ

2014年12月 1日

総選挙、各党の主な労働法制の公約

与党は総花的、野党は実現性に不安

 2日、2年ぶりとなる総選挙に突入する。重複立候補者(選挙区と比例)の惜敗率を加味した475議席の最終的な結果は、投票日翌日の15日未明までに判明する模様だが、2009年と12年の総選挙と最も異なるのは、与野党の公認候補の数を分析する限り、「政権選択選挙」ではないということだ。そうした中ではあるが、各党は急ピッチで「公約」を披露。このうち、労働法制に関する部分について主な主張(政策方針)をまとめた。(報道局)

労働分野もアベノミクスへの賛否

is141201.JPG 自民、公明の与党は、これまで進めてきたアベノミクスに沿った路線の公約を並べているが、概して「総花的」との批判は免れない。両党とも非正規社員の正社員化への道を整備するとしているが、法的な強制に持ち込めば企業側の反発は高まり、「多様な働き方の実現」などを含む全体的な雇用政策の狙いに対して逆効果となる可能性さえある。また、公明が掲げる「政労使会議の活用」も、政府が賃上げなどで経営者側に圧力を掛けるような“活用”であれば、反発はさらに強まる危うさをはらんでいる。

 これに対して、野党側は労働者派遣法の「改悪阻止」や「残業代ゼロ制度」の導入反対など、政府政策に反対する項目を並べている党が目立つ。しかし、グローバルな視点で突き詰めた場合、どういう点が「労働法制の改悪」になるのか、現状維持で問題はないのか、具体的な踏み込みに弱さが見られる。また、「同一労働・同一賃金」の実現を掲げる党が多いものの、日本の賃金制度の歴史を顧みれば、実現には抜本的な制度見直しと意識改革が伴うことから、短期の選挙期間中にどこまで有権者の理解を得られるかは未知数だ。

投票率は戦後最低の可能性も

 総務省によると、2年前の政権選択選挙の小選挙区の投票率は59.32%で、戦後最低だった1996年(初の小選挙区導入)の59.65%を下回った。民主中心から自民中心へ変わる「政権選択選挙」でさえも有権者の投票行動は低調だったことから、「大義なき選挙」とされる今回の投票率は戦後最低を更新するとの見方が支配的だ。

 しかし、日本の選挙制度では、投票率の高低だけで「民意=国民の信任」を「得た」とか「得ていない」といった指摘するのはいささか乱暴であり、現実には投票した有権者による意向で政治の方向性が決まる。投開票後に「低投票率=民意を反映していない」といった指摘が出てくることも予想されるが、民主主義の正当な選挙が行われる現在の日本で、それは必ずしも正しくないことをメディアも有権者もあらかじめ認識しておく必要がありそうだ。

8政党、かく訴える

 各党の労働法制関連の公約の主な部分を抽出した。上記で記した通り、与党は総花的で、野党は具体的ながらも実現性に課題が残る内容となっている。詳細は各党がホームページなどで公式に出している「公約」、「重点政策」、「マニフェスト」などを参照してもらいたい。

【自民】
 「多様な働き方で皆が活躍できる社会を」と銘打ち、
〇産業政策と教育・雇用政策の一体的実施を推進し、人手不足問題の解消及び人材の養成、適正な労働条件の確保を図ります。
〇地域の創意工夫を活かした若者等の雇用の場の創出・人材育成や、人手不足分野の企業での魅力ある職場づくりを推進します。
〇パートタイム労働者、契約社員、派遣労働者等の雇用形態で働いていて、正規雇用への転換を希望する方々のキャリアアップ等を図り、正規雇用への転換を果断に進めます(正社員実現加速プロジェクトの推進)。
 それぞれの人生、生き方、生活を大切にする観点に立った多様な働き方や公正な処遇を実現し、働く方々が納得して働くことのできる労働環境の整備を進めます。
〇長時間労働を美徳とする働き方を見直すことにより、メリハリの効いた働き方を実現するとともに、仕事と家庭の両立支援を推進し、一人ひとりがワーク・ライフ・バランスを実現できるようにします。
〇産業の求める中核人材等を育成するための職業訓練を充実させるとともに、ものづくり人材の確保・育成を進めます。
〇シルバー人材センターの更なる活用や高齢者の方の雇用ルールの見直しにより、働く意欲のある高齢者の方々が生涯現役として働きやすい環境を整えます。

【公明】
 「賃金上昇と若者の正規雇用拡大に向けた取り組み強化」として、「賃金上昇と消費拡大の好循環」を創出するために、「政労使会議」の積極的な活用等により、企業収益を着実に賃金上昇や雇用確保へつながる環境整備を進めます。賃金の底上げに取り組む企業を税制等で支援するほか、最低賃金の引き上げを促すため、中小・小規模事業者への支援を充実させます。
 若者の正規雇用の拡大に向けて、助成金等を活用した非正規労働者の正規雇用への転換を推進するとともに、若者採用・育成に取り組む優良な中小企業等への助成や重点的なマッチングを推進します。

【民主】
 「働く者の立場に立ち、雇用の質を高めます」をテーマに、
〇労働法制の改悪を阻止し、雇用の安定を確保します。
「労働者派遣法の改悪」、「残業代ゼロ制度(ホワイトカラーエグゼンプション)」、「解雇の金銭解決制度」の導入など、労働条件を後退させる労働規制緩和を認めません。
〇労働条件の底上げを図ります。
「同一労働同一賃金推進法」を制定します。正規・非正規を問わず、すべての労働者の均等・均衡処遇、能力開発の機会を確保します。
中小企業に対する支援を行いつつ、最低賃金を引上げます。
〇誰もが心身ともに健康に働ける環境を整備します。
過労死ゼロをめざし、過労死等防止対策推進法に基づいた施策を着実に推進します。

【維新】
 「多様な人材を育てる教育改革」と「女性の力を引き出す」の項目の中に政策方針の核を挙げた。主なものとして、(1)学校での授業と企業でのインターンシップを並行して進め、切れ目なく職業人を育てる「デュアルシステム」によるキャリア教育を推進する、(2)正規・非正規を問わない「同一労働同一賃金」を女性が働く環境整備としても実現する。

【次世代】
 「世代間格差を是正する社会保障制度の抜本改革、徹底的な少子化対策」の中で、同一労働同一賃金の徹底や組合組織化等により非正規労働者の待遇を大幅に改善、より付加価値の高い産業に労働力が円滑に移動できる流動性の高い労働市場を形成。

【共産】
「雇用大破壊を許さず、人間らしく働けるルールを確立します」と宣言し、
(1)賃上げと安定した雇用の拡大で暮らしと経済を立て直す
(2)安倍政権による雇用大破壊を許しません
(3)労働者派遣法の大改悪を許さず、同法を抜本的に改正し、派遣労働者保護法をつくります
(4)ブラック企業をなくします
(5)退職強要をやめさせ、解雇規制法をつくります
(6)異常な長時間労働を是正し、「サービス残業」を根絶します
(7)有期雇用を制限して正社員化と均等待遇をすすめるとともに、「個人請負」などの脱法的契約を許しません
(8)男女がともに、人間らしく生き、働ける均等な労働条件を確立します
(9)最低賃金の大幅引き上げなど、政治の責任で賃金の大幅引き上げを実現します
(10)失業者の生活と職業訓練を保障し、安定した仕事、公的仕事への道を開きます
(11)国と地方の労働行政を強化します

【生活】
「非正規雇用の是正と少子化対策で活力ある社会へシフト」を前面に、非正規労働者の正規化と同一労働・同一賃金を推進。安心・安定して働くことができる生活者本位の雇用政策へシフトしていきます。

【社民】
「派遣法改悪など労働法制改悪を阻止し労働者保護ルールを強化」を柱に据え、“一生涯派遣社員”をつくりかねない労働者派遣法案の改悪を阻止します。労働者の権利性が弱い派遣労働の拡大を許しません。派遣労働は臨時的・一時的なものに留め、直接雇用の原則を徹底します。

 

【関連記事】
臨時国会における労働者派遣法改正案の検証
法案を通す気概に欠けた政府・与党(11月24日)

 

PAGETOP