安倍晋三首相は4日までに、第2次改造内閣の各省庁政務三役(大臣、副大臣、政務官)を固めた。大臣には元官房長官で自民の塩崎恭久氏を起用。政府の労働・雇用政策に対するメディアのスタンスはさまざまだが、いずれにせよ注目度は依然として高い。秋の臨時国会を目前に控え、新体制となった厚労省の政務三役5人の顔ぶれと方針などをまとめた。(報道局)
4日の記者会見で塩崎厚労相は、先の通常国会で法案の記述ミスを野党に突かれて、いったん「廃案」の措置を取った労働者派遣法改正案について、今月末にも召集予定の臨時国会に「再提出」する意向を示している。また、来年の通常国会にも提出を検討している「働き方改革の実現」に関連する各種法案も目白押しだ。
塩崎厚労相は日銀出身で、衆院の当選が6回。この間に、参院議員も経験している。第1次安倍内閣で官房長官を務め、首相に近い政策通。ここ15年ほどの間に、日銀出身の国会議員は党派を問わず次々と誕生しているが、塩崎厚労相はその「草分け的存在」だ。
1975年、東京大学教養学部教養学科アメリカ科卒業、日銀入行。82年にハーバード大学行政学大学院修了(行政学修士)。93年の衆院選で(旧愛媛1区=中選挙区制の最後)初当選。95年7月には参院議員に初当選(愛媛選挙区)。小選挙区制に切り替わっていた2000年の衆院選(愛媛1区)で再び衆院議員に。その後は、5期連続当選を果たしている。
厚労相就任直前までの主な役職は、党政務調査会長代理、日本経済再生本部の本部長代行、衆院予算委員会の筆頭理事などを務めていた。厚労相就任会見では、安倍首相から「持続可能な社会保障制度の構築」、「子どもを産みやすい、育てやすい国づくり」、「被災地、地方を含めた雇用の創出と確保」、「失業なき円滑な労働移動」――の4点を託されたことを強調した。
副大臣には、自民の永岡桂子衆院議員と公明の山本香苗参院議員を据えた。主に労働分野を担当するのは山本副大臣で、01年に比例区から初当選し、現在3期目。1971年生まれの43歳。京都大学文学部卒で、国会議員になる前は外務省職員。国会議員になってからは、経済産業大臣政務官、参議院総務委員長など歴任している。
永岡議員は53年生まれの60歳。学習院大学法学部卒業。比例・北関東ブロック選出で当選3回。第1次安倍内閣で、農林水産大臣政務官を務めている。
政務官は、いずれも自民の橋本岳衆院議員、高階恵美子参院議員。橋本政務官は岡山4区選出、当選2回。74年生まれの40歳。慶大大学院卒。父は元首相の故橋本龍太郎氏だ。
高階氏は参院比例の当選1回。63年生まれの50歳。 東京医科歯科大学大学院医学系研究科博士課程後期中退。看護師、保健師でもある。日本看護協会の常任理事を務めていた。
2001年の省庁再編以降、政務三役5人のうち3人が女性を占めるのは、民主の小宮山洋子元厚労相時代の12年4月から約半年間だけとなる。安倍首相からの4つの指示をいかに具現化していくか、塩崎厚労相の手腕が試されるとともに、主な役割分担が決まった副大臣、政務官の国会と省内運営の切り盛りが注目される。
なお、厚労省を含む全省庁の大臣(特命)18人のうち、自民17人、公明1人で、女性閣僚は5人。副大臣をみると、自民22人、公明3人の計25人で、うち女性は3人。政務官は自民24人、公明3人の計27人で、女性は4人となっている。
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