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2014年8月18日

「日本再興戦略・改訂版」における労働法制の工程(下)

「多様な働き方」の実現で、6年後の就業率80%狙う

 (2)の「民間人材ビジネスの活用によるマッチング機能の強化」では、今年9月から実施予定の「ハローワークの求人情報のオンライン提供」をスタートさせるほか、来年度は「求職情報の提供」へ進めていく計画だ。今春、厚労省内に設置した「民間人材サービス推進室」は、優良な派遣事業者の認定制度を今年度下半期に開始して定着させたい意向。しかし、土台づくりとなる初年度ということもあり、選定基準を含めた認定制度の環境整備や準備には関係者が苦心している模様だ。

 KPIを見ると、6年後の20年までに20歳から65歳の就業率を80%に引き上げる(12年で75%)としている。

is140818.JPG (3)の「多様な働き方の実現」は、「働き方の改革」の中でも注目度が高く、労使激突の本丸となると見込まれる。政府は17年半ばまでを「雇用環境改善のための集中改革期間」という表現で強気の姿勢を示している。具体的には「朝型の働き方を国民運動として推進」を労働政策審議会での検討項目に挙げていきたい考えだ。

 このほか、秋の臨時国会に再提出される労働者派遣法改正案の成立を含む、制度のさらなる見直しも17年度終盤まで続ける構え。現行法のいわゆる「平成24年改正」の問題点で、再提出予定の改正案に含まれていない部分や項目について検討を開始するものと見られる。検討項目は、政府の規制改革会議が昨年10月に追加提言した内容が主軸になる見通し。

 さらに、「多様な働き方の実現」では、「多様な正社員」の導入拡大のための政策的支援を展開していく方針だ。この項目には、最低賃金の引き上げや中小企業・小規模事業所の生産性向上の支援なども含まれている。

 (4)の「女性の活躍促進」は、安倍政権の“肝煎り”と言っても過言ではない。保育体制の充実を念頭に置いた「女性活躍応援プラン」の策定を進めていくほか、場合によっては新法や法改正も辞さない意気込みだ。KPIとしては、「指導的地位に占める女性」の割合を6年以内に少なくとも全体の3割程度に引き上げるほか、放課後児童クラブを5年以内に新たに約30万人分整備すると明記した。

 (5)の「若者・高齢者などの活用促進」は、下準備を終えてこれから実行に移る内容が多い。さまざまな項目を掲げている中で、キーワードとして目に付くのは「インターンシップ」、「若い起業家の応援」、「ジョブカード交付やキャリアカウンセリングの民間委託推進」などだ。KPIは、20年までに20歳から34歳の就業率を78%にするとしており、若者フリーターはピーク時の217万人から124万人まで減少させる目標を立てている。

 (6)の「高度外国人材の活用」については狙いと目的を整理しており、こちらは高度外国人材に特化した在留期間無制限の新しい在留資格創設などを行う入管法改正法が先の通常国会で成立したのを受け、来年度から施行して、3年以内に5000人の高度人材の認定を目指す。

 (7)の「外国人受け入れ環境の整備」は、今年の年末をメドに決める①製造業における海外子会社など従業員の国内受け入れの具体的な制度設計、②国家戦略特区における家事支援人材の受け入れに向けた検討と所要の措置、③特定の国家資格などを取得した外国人留学生に就労を認めるための制度設計――の3点の優先順位を高め、来年度からそれに基づいて実行していく。

 これらの政策すべてが政府の描くスキーム通りに進む保証はないが、「働き方の改革」に関する姿勢には従来の内閣より明確で強い意志を持っており、労働組合側とのテーブルの持ち方を含め、「結果の出る実行」が注目される。 (おわり)

 

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