6月24日に閣議決定された「日本再興戦略の改訂版2014」。基本的な考え方やそこに盛り込まれた「働き方の改革」には、どのような改革項目が掲げられているのか。また、政府はこれから2017年の年央までの3年間を事実上、雇用改革の「集中期間」と位置付けている。改訂版に明記した項目と狙い、達成に向けた工程(スケジュール感)を整理する。(報道局)
改訂版「10の挑戦」に明記された「働き方の改革」
改訂版は、昨年6月に閣議決定した「日本再興戦略」を基軸にその成果や進展状況を踏まえ、「新たに書き込んだ項目」と、達成できていない「残された課題を補強」する、両面からの“建付け”になっている。残された課題の分野には「働き方」「医療」「農業」が入った。当初から「改革が困難な分野の筆頭格」に挙げられていた業界や業種だ。
そのうえで、政府は改訂版の策定にあたり「改革に向けての10の挑戦」と銘打ち、国民へのメッセージ性を明瞭にする方策をとった。その中に「働き方の改革」、「外国人材の活用」という項目を明記した。注目されるのは、「総花的な言葉の羅列」との批判を受けないよう、政策(項目)のまとまりごとに達成すべき成果目標(KPI)を入れた点だ。いわば、「方向性+その結果によってもたらされる数値」であり、後の検証の重要なポイントとなる。
「働き方の改革」と「外国人の活用」にそれぞれ4つの柱
項目の細部に入る前に、政府が目指す「働き方などの方向性」となる柱を明確にしておきたい。まず、「働き方の改革」では、①働き過ぎ防止のための取り組み強化、②時間ではなく成果で評価される制度への改革、③多様な正社員の普及・拡大、④予見可能性の高い紛争解決システムの構築――の4つの柱を立てた。
「外国人材の活用」の方は、①外国人技能実習制度の見直し、②製造業における海外子会社従業員の受け入れ、③特区における家事支援人材の受け入れ、④介護分野における外国人留学生の活躍――の4点となっている。
「雇用制度改革・人材力の強化」の中に具体項目など盛り込む
上記の狙いを「日本再興戦略」では、「雇用制度改革・人材力の強化」という“看板”の下に次の7テーマに分類した。
(1)行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換
(2)民間人材ビジネスの活用によるマッチング機能の強化
(3)多様な働き方の実現
(4)女性の活躍促進
(5)若者・高齢者などの活用促進
(6)高度外国人材の活用
(7)外国人受け入れ環境の整備
(1)の「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」では、今後3年間の動きとして、「雇用調整助成金から労働移動支援助成金への資金シフト」(15年度までに予算規模を逆転)や、サービス分野などでの「業界検定」整備・拡大の支援、客観的な民間委託に職業訓練の調査研究とその見直しを加えた実施――が主な政策となる。
上記を進め、達成したKPI(達成すべき成果目標)として、①失業期間6カ月以上の人数を12年の151万人から18年までに2割減らす、②産業雇用安定センターの機能補強や民間人材ビジネスの活用によって、17年までに2万人の失業なき労働移動を支援する――としている。これまでの選挙における政治公約やマニフェストなどでの数値目標が、結果的に曖昧(あいまい)なまま、おざなりにされてきただけに、政府に対する「達成できたかどうかの視線と検証」は厳しいものになるだろう。(2)以降は次回で。 (つづく)
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