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2014年8月 6日

政府の労働時間規制見直しに対する連合の考え方(下)

政権交代による影響力低下の中での労働運動

政府提起の4項目に対する連合の見解

 「日本再興戦略の改訂版2014」には労働時間法制について大きく4点の提起がある。これについて、提起の4点と連合の考え方を項目ごとにまとめた。

(1)働き過ぎ防止のための取り組み強化

is140806.jpg 政府は「長時間労働が是正されるよう指導監督体制を充実強化し、法違反の疑いのある企業などに対して、労働基準監督署による監督指導を徹底する」などと明記している。
 これに対して連合は、すべての労働者を対象とする労働時間の量的上限規制の法定化、勤務間インターバル規制の導入といった長時間労働防止策を講じるべきだ、と訴えている。

(2)時間ではなく成果で評価される制度への改革

 いわゆる「成果型」について、政府は「一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象に、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した新たな労働時間制度の創設」を提唱している。
 連合は、年間100人を超える人が過労死で亡くなっている現実を直視すれば、すべての労働者を対象とする「勤務間インターバル規制の導入」や「労働時間の量的上限規制の法定化」といった防止策の強化が優先、と反論する。

(3)裁量労働制の新たな枠組みの構成

 「成果型」の“前身”となっている仕組みだけに注目に値する。政府は「企業の中核部門・研究開発部門などで裁量的に働く労働者を対象とし、職種などの対象範囲や手続きを見直した新たな枠組みが不可欠」としている。
 連合は「みなし労働制によって労働時間規制が事実上掛からなくなり、結果として長時間労働・過重労働を生み出す」と懸念を表明。適正な労働時間管理や健康・福祉確保措置の充実などこそ措置させるべきであり、安易な対象の拡大には反対との姿勢だ。

(4)フレックスタイム制の見直し

 政府は、月をまたいだ弾力的な労働時間の配分を可能とする清算期間の延長や、決められた労働時間より早く仕事を終えた場合も、年次有給休暇を活用して報酬を減らすことなく働くことができる仕組みを取る、と法整備に言及している。
 連合は、フレックスタイム制の清算期間の延長は、現行の時間外割増賃金の支払い範囲を狭めかねない、として認められないとの立場を明確にしている。一方で、週休2日制の時間外労働となる時間の計算方式の変更に関し、「そうした見直しが現行法制よりも労働者に不利益を及ぼさないことを前提に認めることも考えられる」ともしている。

「社会的なうねりを起こす」必要性も

 シンポジウムでは、労政審の8つの分科会・部会委員などを務める連合の新谷信幸総合労働局総合局長を進行役に、5人の各分野のパネラーが活発なディスカッションを展開し、会場からの質問にも回答する中身の濃いイベントになった。

 最後に、連合の安永貴夫副事務局長が「今回の緊急シンポで挙がった意見や指摘などから、連合の基本的な考え方の正しさ、言い換えれば政府提案の間違いについて明確になった。社会的なうねりをつくりあげていくしかない」と主張した。

 この訴えの背景には、支持政党である民主党にかつての政治力がないことと、衆参ともに自公連立政権が圧倒的な議席を持っている現実を意識したものと言えよう。労働法制については、今年後半から本格化する「労働時間規制の見直し」の議論から派生する動向が注目される。 (おわり)
 

 

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