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2014年5月26日

難病法、小慢法が成立、来年1月施行

医療費助成に集中した衆参の議論

 難病法(新法)と改正児童福祉法(小児慢性特定疾病事業)が23日、参議院で可決、成立した。難病対策は初めて法的裏付けを持つ制度として運用されることになるが、衆参の厚生労働委員会の議論は一部の患者団体の要請を受けた医療費助成問題に大幅な時間を費やし、肝心な制度の枠組みに対する質疑は脇に追いやられた形だ。来年1月の施行を控え、残された時間は多くない。(経済ジャーナリスト 本間俊典)

 難病法では(1)原因不明(2)治療法が未確立(3)希少な疾病(4)長期療法が必要――の4要件を満たす疾病を「難病」と認定。これらに(5)患者数が人口の0.1%程度以下(6)客観的な診断基準の存在――の2要件を加えた基準に合う疾病を「指定難病」として医療費助成の対象にする。

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超党派で成立した難病法と小慢法

 これらを機械的に当てはめると、助成対象は現在の56疾病から300疾病余りに大幅拡大する。現行の難病対策では「難治性疾患克服研究事業」として、56疾病を含む130疾病が研究対象になっている。また、それ以外に09年度から「研究奨励分野」として200を超える疾病が研究対象になっており、新規認定はこれらの疾病が有力視されている。正式には、現在の厚生科学審議会の難病対策委員会とは別に、専門研究者らで構成する「第三者委員会」を新たに設け、そこで科学的観点から判断する。

 また、現行では56疾病のうち12疾病については、軽症患者を助成対象からはずす「重症度区分」を設定しているが、新制度では原則としてすべての対象疾病について重症度区分を設ける方向だ。これについても「第三者委員会」で判断することになる。新規認定や重症度区分は、所得区分とは別にもっぱら治療研究面から判断される。

 一方、新制度では対象疾病の拡大と同時に、障害者自立支援医療など他制度との均衡を図った結果、医療費の助成基準が引き上げられ、新規認定患者の自己負担上限額は大幅に引き下げられる一方で、既認定患者はほとんどが負担増になる。このため、既認定患者については、施行から3年間の「経過措置」を設けて“軟着陸”を図るが、現行では自己負担のない市町村民税の非課税世帯にも新たな自己負担が発生するなど、負担減を求める声が今後も相次ぐと予想される。

積み残した課題に付帯決議

 衆参の厚労委でも、助成対象からはずれる可能性のある疾病や、自己負担の増える患者団体などの要請を受けた委員から、難病の認定要件から「希少性」をはずす、低所得層の自己負担限度額を下げる、などの意見や提言が相次いだ。厚労省はそのたびに、「第三者委で議論してもらう」「他制度との均衡を図らなければならない」と繰り返し答弁したが、今後は既得権を失う患者側の抵抗が「第三者委員会」にまで波及しかねず、施行に向けた準備に影響を与える懸念も残されている。

 また、衆参両委員会からは採択にあたって付帯決議が付いた。難病法では「希少性」要件の見直しや治療の地域格差縮小、小慢法ではトランジッション問題の解決など多項目に渡っており、法制化が実現したとはいえ、積み残した課題も多いことを印象付けた。

 

伊藤たてお・日本難病・疾病団体協議会代表理事の話 法制化によって難病対策の制度的基盤が確立することを心から歓迎します。40数年ぶりの国会の集中審議では、改めて難病対策の現状と課題が総合的に浮き彫りにされました。衆参両院の付帯決議に盛り込まれたさまざまな課題の実現に向け、なお一層の努力を重ねたいと考えます。
 

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