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2014年5月 5日

後半国会へ、厚生労働関係法案の進ちょく状況

派遣法改正案など未着手の取り扱いが焦点

 国会は大型連休を挟んで、後半へ入る。政府は提出法案の成立に全力を注ぐが、野党は与党ペースの進行にストップをかけるための動きを本格化させる。特に、労働者派遣法改正案や有期雇用の特別措置法案など11本の法案を提出している厚生労働省関係の行方は、後半国会でさらにメディアの注目を集めそうだ。5日現在の進ちょく状況を法案ごとに整理する。(報道局)

is140505.JPG 政府が提出を予定していた11本は、3月13日までにすべて提出された。しかし、成立したのはまだ3本で、審議中が5本、未着手が3本となっている。今国会の閉会後には、第3次安倍政権の組閣が予定されており、与党内では会期の延長はないか、あった場合でも極めて短期間との見方が支配的だ。

 そうした状況の中、成立した法律は(1)改正雇用保険法、(2)改正次世代育成対策支援推進法、(3)改正パートタイム労働法(改正パート法)――の3本。うち、労働法制となる改正パート法は4月16日に参院で可決、成立し、同23日に公布された。改正の中心は同法8条で規定している「差別的扱いの禁止」の範囲拡大だ。

 同法ではパートタイマーであることを理由に「通常の労働者」(正社員)と異なる労働条件で就労することを禁止していたが、対象は①正社員と職務内容が同一、②人事活用の仕組み・運用が同じ、③無期雇用あるいは実質無期雇用――の3要件を満たすパートに限られていたことから、対象者は全パートの1.3%程度に過ぎなかった。

 今回、3要件のうち③を削除して、①と②の2要件を満たすパートに対象を拡大するもので、厚労省の試算では新たな対象者は約10万人、比率は2.1%程度に上がるとみられている。施行日は公布から1年以内で、近く開かれる労働政策審議会で正式に決まる。

介護保険法改正案は5月中旬に衆院通過へ

 審議中の5本は、(4)介護保険法改正案(医療法改正案、地域介護施設整備促進法改正案など含む)、(5)難病法案(新法)、(6)児童福祉法改正案、(7)労働安全衛生法改正案(安衛法)、(8)医薬基盤研究所法改正案。現在、衆院厚生労働委員会は(4)介護保険法改正案を審議しており、政府は関連法案を含めて5月半ばに衆院を通過させたい意向だ。

 (5)は新法で、(6)とセットで審議。4月22日に衆院で可決し、参院へ送られている。参院での審議入りは5月中旬の見通しで、いわゆる与野党の「対立法案」ではないため比較的順調に成立する公算が高い。

 (7)の安衛法は、効率的な審議と議会運営の観点から参院先議の手法をとった。4月9日に参院を通過し、衆院に送られている状態だ。「メンタルヘルス対策の充実・強化」が主要項目のひとつ。

 内容は「精神的健康の状況を把握するための検査等」という新たな項目を設け、一定規模の企業を対象に①労働者に対し、医師または保健師による精神的健康の状況を把握するための検査を実施、②検査を行った医師または保健師から当該検査の結果の通知――などが盛り込まれている。成立すれば一部の見直しを除き、来年4月施行となる見込みだ。

 (8)医薬基盤研究所法改正案は、4月22日に衆院から参院へ進み、審議入りしている。

行方が注目される未着手の労働2法案

 審議入り(提案理由の説明)に至っていないのは、(9)国民年金法等改正案、(10)労働者派遣法改正案、(11)有期雇用の特別措置法案――の3本となっている。中でも(10)と(11)の労働関係2法案の今国会での取り扱いが注目されている。

  (10)派遣法改正案は、政令26業務を廃止し、期間制限を「派遣労働者」と「受け入れ事業所(派遣先)」のそれぞれに設けるほか、派遣事業の一般(許可制)と特定(届け出制)の区別をなくして、すべて許可制とすることなどが軸となる。このほか、派遣元に派遣労働者のキャリアアップのための計画的な教育訓練の実施を義務付ける。

 規制緩和か強化かといった従来までの色分けを超えた抜本改正で、部分的な改正項目だけでなく、全体的に「規制のかけ方の大きな見直し」という表現が適当と言える。審議入りしていないものの、民主、共産、社民は「対立法案」と位置付け、反対の立場からそれぞれの考えを主張している。

 同様に(11)も「対立法案」。特例とする有期労働者は、(1)一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術または経験を有する人(上限10年)、(2)定年後に同一の事業主、この事業主と一体となって高齢者の雇用の機会を確保する事業主に引き続いて雇用される高齢者――に限って対象とする。

 後半国会は、この2法案の取り扱いをめぐって与野党の攻防と神経戦が展開される見通し。また、政府の規制改革会議が6月に予定する第2弾の提言には、解雇規制の見直しなど労働法制に関する項目も入る方向で、国会外の動きも合わせ、これからの日本を見据えた雇用・労働のあり方に関する議論が白熱しそうだ。

 

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