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2014年3月27日

労働者派遣法改正案、国会提出までの記録―⑥

「労働政策審議会・労働力需給制度部会」の経過(2)

団交応諾義務、均衡・均等待遇などで議論 2013年10月25日

is140327.jpg 派遣先の責任(団体交渉応諾義務など)、派遣労働者の待遇(均等・均衡待遇、労働・社会保険の適用を含む)、派遣労働者のキャリアアップ措置――の3点について議論。

 団交応諾義務は、派遣労働者が派遣先企業に団交を申し入れた場合、派遣先に応じる義務を課すかどうかという問題。現在の労働者派遣法にはなく、労働組合法に規定されているだけで、間接雇用の場合を想定していない。

 この日、労働者側委員は、「派遣は雇用と使用の分離という特殊な形態であることから紛争が多く、裁判になっても解決に時間がかかる。派遣法の中に規定を設けるべきだ」と主張。これに対して、使用者側委員は「『使用者性』の問題については紛争ごとの個別性が強いため、あくまでも労組法の中で考えるべきだ」と、研究会報告を支持した。

 均衡・均等待遇とキャリアアップについては、欧米の「職務型」制度と日本の正社員の「職能型」制度という根本的な違いが背景にあるだけに、派遣制度の改正だけでは改善が困難な実情が垣間見え、議論がかみ合わない場面が多々みられた。

日雇い派遣の原則禁止めぐり労使平行線  「24年改正法」見直しの可否 11月7日

 2012年10月に改正、施行された現行の労働者派遣法(平成24年改正法)の見直しの可否と、労働契約の申し込みみなし制度(2015年10月施行予定)を中心に議論した。24年改正法以外では、無期雇用の派遣労働者に対する事前面接の是非、悪質事業者の指導監督などがテーマに上がった。

 まず、24年改正法について、使用者側が日雇い派遣の原則禁止の廃止、離職した労働者の1年以内の派遣禁止の見直し、派遣会社のマージン率公開の廃止など、改正法に盛り込まれた規制の大半について「見直しか廃止すべき」と、現場の具体例を交えながら不合理な実態を訴えた。

 これに対して労働者側委員は「改正法は施行からまだ1年しか経っておらず、何が起きているか見直す判断材料もないので、変えるべきではない」と強く反論。その後は、使用者側と労働者側がさらに反論と主張を交互に繰り広げる展開となった。

 このほか特筆される議論として、違法派遣が発生した場合に派遣先が派遣労働者に労働契約を申し込んだとみなす「申し込みみなし制度」について、使用者側委員が「採用の自由、雇用契約の合意原則に反する。要件の中に偽装請負が発覚した場合も含まれているが、派遣と請負を区分している『告示37号』自体、内容がはっきりせず、裁量行政の余地も多い。廃止かせめて偽装請負の要件ははずすべきだ」と主張。これについても労働者側は「違反行為の抑止を目的にした規定であり、そもそも施行前の見直しなどは論外」と受け付けなかった。

28日に期間制限を中心とする「厚労省たたき台」提示 11月14日

 労使のこれまでの「主張の対比」を整理したペーパーに基づき、追加要望などを議論した。労働者側委員は「常用代替防止」の堅持を繰り返し強調。メドとしている年内建議(答申)の期日が迫る中で、事務局の厚労省は労使の要望に応える形で、議論の主要テーマである「期間制限の見直しとあり方」を主軸に「厚労省のたたき台」(複数案)を次回28日の会合で提示することを申し合わせた。

 この日は使用者側から、政令26業務の撤廃と「業務から人」への3年ルールに関連して、「派遣労働者のキャリア形成や雇用安定などの観点から、3年過ぎて本人がなお派遣を希望している場合は、さらに2年延長する措置があってもいい」との提案があった。一方、労働者側は「常用代替防止」が派遣法の立法の根幹にあったとして、「在り方研」が出した報告書の中で、「派遣労働は多様化しており、常用代替に対する十分な検討が必要」と疑問を投げ掛けた点に激しく反発。「我々は“正社員を守れ”と主張しているわけではなく、不安定な間接雇用の改善が必要だと言っている。報告書に基づいて(たたき台を)作るのは絶対反対」と強調した。

派遣期間制限など3項目で労使激論  厚労省が「たたき台」提示 11月28日

 事務局の厚労省が提出した3項目の「たたき台」を巡って労使双方が激しい攻防を繰り広げ、この日は事実上の時間切れで終わった。とりわけ、労働者側の「常用代替防止」を論拠にした派遣期間制限にこだわる姿勢は非常に強く、「落としどころ」が見えない状態となった。最終的にどのような建議(答申)になるか、年内決着の有無を含め極めて不透明な情勢になってきた。

 提示されたたたき台は(1)期間制限の在り方について。A案(政令26業務の内容を見直したうえで、業務区分に基づく期間制限を維持する)とB案(派遣元との契約期間の区分に基づく期間制限に改め、一定の場合に派遣先労使がチェック)――の2案。(2)均等・均衡待遇について。A案(均等待遇の確保策をとる)とB案(均衡待遇の強化策をとる)――の2案。(3)キャリアアップ措置について――の3項目にしぼった内容。 (つづく)

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