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2014年3月21日

労働者派遣法改正案、国会提出までの記録―③

「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」の経過(3)

「26業務」「常用代替」に議論集中 2013年2月28日

is140321.jpg 前回に続いて中核的なテーマである政令26業務と常用代替防止について、主に法的側面から議論した。どちらも派遣制度の根幹となる、かつ多面的な課題だけに、議論は錯綜した。

 政令26業務については、現行制度が26業務に該当するかどうか分かりにくいとの指摘を踏まえたもの。また、常用代替の問題は、自由化業務についてこれまで派遣期間の上限を設定してきたが、「業務」面からの防止システムが真に妥当かどうかという問題提起に基づき議論が交わされた。

テーマに議論かみ合わず 3月14日

 「派遣先の責任の在り方について」と「37号告示について」をテーマに議論した。特に、告示37号は派遣事業の定義にかかわる根っこの問題だけに熟議が期待されたが、テーマが提示された段階で意見や発言が休止。鎌田座長が「根が深い、言い出したらきりがない根本的な問題」ととりなして、委員に対し説明を始めるひと幕も。委員からは「どういう問題があるのか事例がないと想像しにくい」といった声が聞かれた。

 この日は、3つの討議テーマが予定していたが、「労働・社会保険の適用について」は時間の関係上、次回に見送られた。この日の議論は、これまでの議論と比べても低調で、委員の意見の主旨(意図)について他の委員のとらえ方に「ズレ」があったり、事務局である厚労省の補足説明にも首をかしげたりする委員の姿が見られた。

アンケートの“読み方”や「均衡待遇の在り方」など5項目で議論 3月29日

 (1)「労働・社会保険の適用」、(2)「均衡待遇」、(3)「特定目的行為(いわゆる事前面接等)」、(4)「無許可・無届事業所に対する指導監督」、(5)「アンケート調査結果を踏まえた対応」――の5項目について議論した。

 この日、研究会に提出された「労働者派遣の実態アンケート」と「派遣労働者(ウェブ)実態調査」については、個別の回答内容を吟味する以前の根本的な問題として、「派遣労働者のアンケートが質問紙とウェブの2本あるが、同じ設問のはずなのに数字や属性が一部違い過ぎるのでは」、「質問紙は男性の回答が半数以上になっているが、女性が多いという派遣社員の実態をとらえきれていない」、「ウェブもリサーチ会社の登録者の回答であり、母集団にバイアスがかかっている」――などといった指摘が挙がった。

改正法施行半年の状況を初公表 4月23日

 (1)改正派遣法の施行状況を踏まえ、今後さらに検討すべき事項、(2)研究会におけるこれまでの主な議論で、さらに深めるべき論点――の2点について議論した。(2)は研究会の議論も終盤に入る中で、全体をおさらいする「総まとめ的」な意味合いが含まれていた。

 まず、(1)の改正法施行から約半年の状況については、東京、大阪、愛知の3大都市の労働局から収集した現場の情報を事務局が整理して今回初めて提示。内容は、グループ企業内の8割規制、マージン率の公表、無期転換推進措置、日雇い派遣の原則禁止、離職後1年の派遣禁止など8項目に及んだ。

 この日の研究会委員の議論は、8割規制と日雇い派遣の禁止にほぼ集中。「8割規制が常用代替防止になったかどうかは疑問であり、結局は非正規内の移動が起きただけではないのか」といった疑問が出た。

 また、議論の席上、新たな事業(施策)として事務局が、従来の指導・監督の違反事業所の公表だけでなく、優良な派遣元や紹介事業者について基準を定めて公表する、いわゆる「認定制度」(仮称)を設ける考えを報告した。初年度は基準づくりが主となる模様だが、派遣と紹介の優良事業者の育成と悪質事業者による業界全体への“風評被害”を避ける狙いがある。認定制度については、製造請負の分野で優良適正事業者の認定を2010年度から実施している。 (つづく)

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