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2014年3月17日

労働者派遣法改正案、国会提出までの記録―①

「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」の経過(1)

 政府は11日、労働者派遣法改正案を閣議決定し、国会に提出した。規制のかけ方を抜本的に見直す改正の方向性や骨格について議論を重ねてきた、有識者会議「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」と、厚労相の諮問機関である「労働政策審議会職業安定分科会・労働力需給制度部会」。5月以降とみられる審議入りを前に、重要な位置付けを成す2つの「テーブル」で展開された議論の経過をダイジェスト版で記録する。はじめに「在り方研」、続いて「需給制度部会」の順に7回連載で振り返る。(報道局)

全16回、関係者らのヒアリングにも注力した「在り方研」

is140317.jpg 2012年10月、当時の政権党である民主と、野党の自民、公明による「3党合意」によって、改正労働者派遣法(現行の平成24年改正法)が施行された。それと同じ月に、厚生労働省は再改正を念頭に有識者会議「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」を設置。同年3月の改正法成立時における衆参の付帯決議に基づいた対応で、委員は学識者ら7人。派遣制度全般にかかわる諸課題を関係者らのヒアリングを織り交ぜながら約10カ月間、全16回にわたり協議した。「需給制度部会」の議論につなげる「報告書作成」の役割も担った。開催期間は2012年10月17日~13年8月20日。

「派遣制度の在り方研究会」が初会合 法的・制度的な視点で専門的検討を開始 2012年10月17日

 初会合を開き、座長に東洋大学法学部の鎌田耕一教授を選任した。平成24年改正法(現行法)の成立過程で議論が先送りされた登録型派遣、製造業派遣、特定労働者派遣事業、派遣可能期間のあり方を中心に、派遣制度全般にかかわる諸課題を幅広く議論することを確認。施行直後ということもあり、現行法に関する問題点を検証し、見直しの提言にまで踏み込めるかは未知数なスタートとなった。

有識者からヒアリング開始 10月29日

 有識者からのヒアリングに入った。最初は、同研究会委員でもある労働政策研究・研修機構の小野晶子副主任研究員。小野氏は「派遣労働者のキャリア形成という視点から今後の政策課題を考える」と題して、2008年から1年余りをかけて実施した派遣労働者への詳細なヒアリング調査などを基に、派遣労働者のキャリア構築の難しさと、考えられる方策などを解説した。

 派遣労働者の場合、キャリアを積んでいない若年層が多いこと。派遣労働者自身も、キャリア形成への希望が強く、派遣業界も重視し始めていること――などを指摘。制約の多い派遣の就業形態の中で、「キャリアラダー(キャリアの階段)」をつくる試みを提案し、具体的には、(1)派遣元と派遣先が共同で派遣労働者の職務遂行評価基準を設ける、(2)派遣元は業界内でアライアンスを組み、過去のキャリアを評価できるようにする、(3)派遣業界でジョブカードを使いやすくする、(4)セグメントを定めて集中投資する――などを挙げた。

海外の制度をヒアリング 11月7日

 海外の労働者派遣制度について、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員と静岡大学人文社会科学部の本庄淳志准教授の2人からヒアリングした。濱口氏はEU(欧州連合)全体の制度変更、本庄氏はドイツの制度について解説。

 まず、本庄氏によると、ドイツの派遣制度は戦後から70年代前半までは禁止されていたが、「72年法」で解禁となり、それ以降はほぼ一貫して規制緩和の流れが継続。しかし、日本以上に直接雇用への志向が根強いことを説明した。

 次に濱口氏は、80年代から始まったEUの派遣労働指令の流れを解説。指令を受けて、加盟各国は対応をとっているものの、その内容は国によって現在もかなりバラつきがあることなどを説いた。

個別企業、派遣労働者からの非公開ヒアリング 11月27日

 この日の会合は、プライバシーの関係上、会合全体が非公開。 (つづく)

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