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2014年3月10日

派遣・請負最大労組、JSGUの緒方会長に聞く(下)

「派遣労働者のキャリア形成 派遣先や行政の参画も」

―― 今回、派遣労働者の雇用安定と同時に、キャリア形成にも大きな重点を置いて、派遣元の責務が強化されました。

is140310.jpg緒方 これも大きな前進だと思います。キャリア形成は派遣に限らず、有期雇用全体に関わる課題です。ただ、派遣の場合、個々の派遣元企業にだけ責任を負わせるのは現状では課題が多いのではないでしょうか。派遣と言っても、事務系、製造系、技術系、日雇い系などさまざまな職種があって、それぞれにキャリア形成の中身が違います。また、キャリアアップを客観的に評価して、賃金などの待遇に反映させるシステムなども必要になってくると思います。

 また、登録型の派遣会社の多くは、売り上げに対する利益率は低く、自社のみで研修などに掛かる時間や費用を工面するには大変厳しい環境だと思います。

―― どうすれば実効性を持たせることができると思いますか。

緒方 制度として定着させるには、派遣元が一義的な責任を持つにしても、それに派遣先企業、派遣労働者、国などの行政機関も加えた官民による制度を構築して、雇用保険制度も活用するといったような制度が必要だと思います。

 欧米のように、ジョブ型就労が基本になっているのならともかく、日本では企業内のOJTによるキャリア形成が主流ですから、そこから弾き出されている非正規労働者にはキャリア形成の手段が極めて限られています。それぞれが応分の育成コストを負担して、派遣就労の実態に沿った制度にできないものかと思います。

―― 新制度では、派遣労働者と派遣先従業員との賃金面などの「均衡待遇」を図るよう配慮義務が課せられます。

緒方 これはむずかしい問題です。派遣労働者の賃金は、全体的に見てパート・アルバイトより高く正社員より低くなっています。制約がなく仕事以外にも負担がある正社員、仕事・勤務地・勤務時間などの制約がある派遣労働者が例え同じような仕事をやっていても、「派遣先正社員の賃金水準に近づけるよう配慮しなさい」という単純な解釈が難しいわけです。

 また、労働市場の需給要因に直接左右される派遣料金を原資にしている以上、派遣労働者と派遣先企業社員との均衡待遇を図れと言っても、その取り扱いは大変難しい問題です。

 だからこそ集団的労使関係をベースに活動する民主的労働組合を組織し、当事者である労使間で実状に沿った均衡待遇の在り方を探っていくことが必要だと思います。

―― 2008年暮れの「年越し派遣村」をピークにした派遣バッシングから5年が経ちました。現在は好転していますか。

緒方 当時の派遣イジメの嵐は実に不条理なものでした。派遣はワーキングプアの温床であり、就労形態自体が悪いという間違ったイメージが、メディアによって一気に広がりましたから。一生懸命働いても「派遣で働いている」と家族にも言えなくなるという異常な状況でした。生きがいをもって働いていた人たちをどれほど傷つけたかわかりません。

 今はさすがに当時のような嵐はありませんが、その時に作られたイメージはまだ残っています。私たちは今回の法改正で、派遣が多様な就労形態のひとつとして認められるスタートを切れたと受け止めており、これを出発点にしてより良い制度構築に向けた努力を重ねたいと思っています。 (おわり)


緒方 裕司氏(おがた・ゆうじ)1950年熊本県水俣市出身。74年中央大学卒、長崎屋入社。同社労組副委員長を経て2007年4月、UIゼンセン同盟(現UAゼンセン)人材サービスゼネラルユニオン入局。09年11月、同会長就任。

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