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2014年1月13日

雇用改善、若年層でも顕著に

課題は持続的成長産業の育成

 本格的な景気回復に伴い、国内の雇用情勢も拡大している。長きにわたるデフレ経済下で企業は正社員の給与水準を抑えると同時に、業務内容を再整理して非正規社員を増やして総人件費の抑制に努めてきた。しかし、ここに来て労働市場に「人材不足」のひっ迫感が漂い始めたことから、ようやく人件費増に向けた流れができつつある。ただ、景気循環に左右されるパート・アルバイトを中心とする非正規労働の拡大が目立つのが実態だ。(報道局)

 総務省の労働力調査によると、2008年秋のリーマン・ショックをきっかけにメーカーの非正規の大量雇い止めがあったことから、完全失業率(季節調整値)はそれまでの4%前後から一気に悪化。09年後半には5%台を突破し、同年7月に5.5%のピークを記録した。その後も10年まで5%台を続けていたが、11年にようやく4%台に低下。13年に入ると、安倍政権によるアベノミクス効果で4%を切って3%台まで下がる月も出るなど、リーマン前の水準に戻った。

is140113.png とりわけ、リーマン直後から10%の大台を記録し、社会問題にもなった「15~24歳」の若年層の失業率の改善が進み、13年に6%台まで大きく低下した。完全失業者数(季節調整値)もリーマン直後の50万人台から最近は30万人台と20万人前後も減っている=グラフ。欧州など二ケタ台の高失業率に苦しんでいる先進国の中では、異例ともいえる低さだ。

 業界関係者によると、円安による自動車などのメーカーの生産回復によって、期間工などの労働需要が増えたこと。来年4月からの消費増税前の駆け込み需要が高まっていること。消費税対策として、政府が公共事業などの大型景気策を講じていること。全国展開している外食チェーンなどの出店意欲が依然として旺盛で、慢性的な人手不足にあることなどが主要因とみられる。

 若者の場合、新卒時に就職活動に失敗してフリーターなどになると、正社員になる機会が著しく制限され、賃金水準が低く、雇用も不安定な非正規社員のまま年齢を重ねる可能性が大きいことから、政府もハローワークなどを通じて新卒支援に力を入れていた。また、人材ビジネス企業が人材派遣や紹介予定派遣といった形で企業との仲介を果たした点も大きい。

正社員の求人倍率は0.63倍

 企業の求人意欲の高まりは、厚生労働省の有効求人倍率(季節調整値)にも現れ、昨年11月は1.00倍と6年ぶりに1倍の大台に乗せた。09年当時の同倍率は0.5倍以下だったが、その後、ジワジワ倍率が上がり続け、13年に入ると加速した。

 しかし、企業の求人要望はパートなどの非正規労働が中心で、正社員の求人倍率になると昨年11月でも0.63倍に過ぎず、1年前の0.52倍より上昇してはいるが、全体の1.00倍よりは大きく下回っている。求職者の多くが正社員を望んでいるものの、企業側が正社員の採用には依然として慎重な姿勢を崩していないことがはっきりわかる。

 失業の場合、その要因として景気動向を反映した「循環的失業」と、ミスマッチによる「自然失業」に分けられる。循環的失業は、景気が良くなれば雇用も増え、悪くなれば雇用も減ることから、調整弁としての非正規労働にシワ寄せが行きがちだ。これに対して、自然失業は求人企業と求職者の望む仕事や待遇などが折り合わないことから発生する、いわば構造要因。

 今回の雇用改善は循環的失業の減少が大きいとみられ、次の景気後退期には再び悪化する可能性があるため、持続的な成長が見込まれる成長産業への構造シフトを加速させる必要がありそうだ。また、政府の規制改革会議などで議論が進んでいる、若者のキャリアアップ支援策の拡充も急がれる。

 

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