―― 今も「派遣離れ」をあおるメディアが少なくありません。協会としては、派遣という働き方の重要性、あるいは意義付けをどうアピールしていきますか。また、東日本大震災以降、特に動きを強めている官民の連携強化、社会的役割についてどのように考えていますか。
家中 08年のリーマン・ショック以降、派遣スタッフは減少の一途をたどっていて、今現在も歯止めが掛かっていないのが実情です。多くのスタッフが派遣先企業などに直接雇用されたためだと思いますが、実はその大部が正社員でなくパート、アルバイトなどで、雇用の安定はおろか、収入減にも見舞われている人も少なくありません。これが「派遣離れ」の結果なのです。
派遣就労のメリットは、家事や育児、介護と仕事の両立が難しい主婦や高齢者などが、自分の都合に合わせて働ける点にあり、企業側にも必要な時に必要な人材を得られる点にあります。とりわけ、日本の労働力人口の減少が鮮明になりつつある中で、就労意欲のある女性や高齢者層にとって、派遣就労の持つ社会的な意義はとても大きいものがあると思います。これらについて、社会に積極的に情報発信する必要があると痛感しています。そのためには、官民の協働も不可欠です。
―― 7月に発足予定の人材ビジネス4団体による「人材サービス産業協議会」(仮称)に期待することは何ですか。
家中 人材ビジネス業界が大同団結して、社会にアピールできる重要な場になることを期待しています。4団体の事業内容はそれぞれ少しずつ違っています。
しかし、広い意味での人材ビジネス業界としてとらえ、人材募集、派遣、紹介、請負といった各分野を通じて雇用創造とキャリア形成に資する分野だということを知ってもらえるよう努めます。難しい部分もあるでしょうが、そこは乗り越えていくことが大切だと考えています。
―― 10月にはCiett北アジアの会議が日本で開催されます。今年3月のアジア地区リージョナルワークショップも「世界から見た派遣労働の潮流」を学ぶうえで効果的でした。
家中 企業の人材ニーズもグローバル化しており、もはや日本の国内だけで考える時代ではなくなっています。新卒市場でも転職市場でも、外国人の就労者や海外で就職する日本人は確実に増えており、それは当然の流れだと思います。
しかし、日本の労働市場は規制が強く、お世辞にもグローバル化されているとは言えません。時代に合わせた規制改革が必要です。Ciettでの議論は、そうした世界の労働市場の流れをリアルタイムで知ることで、日本の規制制度を考えるための貴重な場となっています。今後も、グローバルな視点と発信は協会活動のポイントのひとつとなります。 (おわり)
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家中 隆氏(いえなか・たかし)1949年10月、群馬県出身。72年3月、早稲田大学第一法学部卒業、東京海上火災保険(当時)入社。長野支店長、常務、専務、副社長を経て2010年6月退任。同月、東京海上日動キャリアサービス社長に就任、現在に至る。