人材サービス産業の市場規模は約9兆円、マッチングや就業管理の対象者は約475万人――。人材サービス関連4団体による「人材サービス産業協議会」(仮称)設立に向けた記者会見=写真=が21日開かれ、その席で発表した報告書「2020年の労働市場と人材サービス産業の役割」でこんな数字が初めて明らかになった。 (報道局)
4団体は日本人材派遣協会、日本生産技能労務協会、日本人材紹介事業協会、全国求人情報協会。6月に発足した研究会「人材サービス産業の近未来を考える会」がまとめたもの。これまで日本人材派遣協会など個別の発表はあったが、「人材サービス産業」として包括的な市場規模を試算したのは初めてだ。
同報告書によると、人材サービスの代表的な形態には求人広告、職業紹介、派遣、請負の四つがある。求人広告を通じた年間就職者数は約214万人、売上高は9866億円。同様に、職業紹介は約35万件、1861億円、派遣は約157万人、6兆3055億円、請負は約69万人、1兆5757億円(請負は08年度、それ以外は09年度)。これらを合計すると、市場規模は就職者数が約475万人、市場規模は9兆539億円になる。
これを代表的な他産業と比較すると、鉄道(私鉄大手とJRの合計)の約13兆円(日経新聞調べ)、介護サービスの8兆3000億円(同)の間ぐらいに位置し、国内ではかなりの産業規模になっているという。
ハローワーク上回る利用頻度
また、リクルートワークス研究所の調査によれば、政府のハローワークと比較した場合、入職経路別の失業給付の給付率(09年度)でみると、失業給付なしで転職した人の割合は人材サービス産業の70.6%に対して、ハローワークは42.6%。失業を経ない転職は民間ビジネスが圧倒的に多く、転職コストの軽減に大きく寄与している。
さらに、厚生労働省の雇用動向調査(09年度)では、未就業者が就業する場合の入職経路は、人材サービス産業経由の43.8%に対して、ハローワーク経由の21.5%を大きく上回っている=グラフ。
中でも、女性の就業に対する貢献度は大きく、女性の派遣浸透率(雇用者に占める派遣スタッフの割合、10年度)は30代前半で約5%に達し、出産・育児などで女性の就業率が落ち込む「M字カーブ」のフラット化に寄与している。
4団体は今後、社会の期待に応えるため、①マッチング・就業管理を通じたキャリア形成の支援②採用・就業における「年齢の壁」の克服③異なる産業・職業へのキャリアチェンジの支援④グローバル人材の採用・就業支援⑤人材育成による人材サービス産業の高度化――に取り組むとしている。
日本の労働市場はいわゆる正社員の減少と非正規労働者の増加が顕著で、10年度は非正規の比率は34%に達している。同時に、就業形態の多様化も進んでおり、企業と就業者のマッチングや就業管理に多くのノウハウを持つ人材サービス産業の役割が今後さらに高まると予想される。
4団体は12月8日、報告書を基に初めての共同開催となる公開シンポジウムを東京・銀座で開く。