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2011年7月11日

日本生産技能労務協会会長 清水竜一さん (下)

「被災地区雇用センター」で社会貢献

―― 技能協(JSLA)の体制刷新とほぼ同時期に、東日本大震災の復旧・復興が国家的テーマになりました。5月末に発足した「JSLA被災地区雇用支援センター」(清水竜一センター長)はその一環ですか。 

shimizu2.JPG清水 被災地の方々にとって、ひと息ついた後は雇用問題が大きな課題になることは予想されていたことですし、4月に細川律夫厚労相からも当協会を含む人材ビジネス業界に直接要請がありました。私たちも震災直後から会員会社などを通じて現地の状況をつかみ、政府や与野党国会議員の方々にも働きかけを続けてきたところです。

 まず、被災担当を岩手、宮城、福島、茨城・栃木の4ブロックに分け、協会の役員会社にそれぞれ担当してもらい、ハローワークを通じた積極的な求人活動に乗り出しているところです。さらに、民間の人材ビジネスとして、求人と求職の双方を能動的にマッチングする活動を展開しています。 

―― 「能動的」とはどういう意味ですか。 

清水 被災された方々の中には、自宅から遠く離れた場所へ避難されている人も多いですが、社宅に入っていただいてスキルアップしてもらい、いずれ地元へ戻った時にも使える汎用スキルを磨いてもらう仕組みを考えています。

 当社では宮城県の高校新卒を4人採用して、現在、滋賀県で教育訓練してもらっています。何年か経った後に、いずれ地元に必要とされる人材になるよう、技術を磨いてもらっているのです。

 こうした大災害をきっかけに若手の地元離れが進むことを自治体も気にしています。人材育成は私たちにとっても大きな課題ですから、そうした被災地の心情を汲んだプロジェクトを広げたいと考えています。各地の会員企業の力を借りて実施すれば、地域の要望に沿ったサービスを展開できると考えています。

 被災地メーカーのサプライチェーン(供給網)もようやく復旧して、本格的な生産再開とともに雇用意欲も高まってきました。この秋口ぐらいには一気に生産が回復し、それとともに人材ニーズも高まると予想されます。それを見越して、現在、失業給付を受けている人にも教育訓練を施し、本番で即戦力になるような“特例措置”もあってよいのではないかと思います。行政、自治体の協力が得られれば、業界で進めることはそれほど困難なことではないのですが。 

「人材育成」がカギに 

―― 技能水準の向上は今後、重要性を増しますか。 

清水 非常に重要であり、そこを従来の人材ビジネスとは決定的に異なる点にしたいのです。これからは単なるマッチングではなく、人を育成するという付加価値がないと意味がありません。「認定制度」でも、ものづくり力、人づくり力が重要になっています。今後は現場の監督者を育成する「事業所責任者」資格制度の充実を考えています。

 震災をきっかけに、メーカーの海外移転に拍車がかかるとの見方があるのは承知しており、そうした事例も見受けられます。それに対応するには、「国内コストの最適化」を図れるような、リーズナブルで良質なサービスを請負業界はめざす必要があります。

 同時に、それが外部労働を使うメーカーにとってもメリットになるということを認識していただくこと。その旗振り役を担います。 

―― 労働者派遣法の改正問題は浮沈を繰り返して帰着点が見えにくいですが。 

清水 政治の動き次第ですから、何とも言えませんが、仮に改正法案が成立した場合、製造派遣が禁止されても請負としてできる会社は限られますから、「認定制度」を通じて適正な請負をできる会社を増やすことをめざしています。逆に、廃案などになって現行法通りということになっても、派遣は期間制限などがあって、メーカーにとって継続的に活用できないので、請負の活用を促進するようにお願いしていきます。

 ただ、いずれにしても規制を法的に受ける前に、業界の自主規制という形で規律ある業界をめざして「認定制度」を活用していく方針です。これを足掛かりに、これからはこの制度を拡大・充実させていくのが私に与えられた役割だと思っています。 (おわり)

 

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