慶応大学大学院商学研究科教授の鶴光太郎氏がこのほど、『人材覚醒経済』(日本経済新聞出版社、2800円+税)を刊行した。第3次安倍政権が「働き方改革」を政府の主要政策に掲げ、雇用・労働改革に本格的に乗り出したが、本書はそのエッセンスを盛り込んだタイムリーな内容となっている。
「序章 人材覚醒」から正社員システム、人材覚醒の雇用システム、女性の活躍を阻む壁、労働時間改革など全10章で構成。日本の雇用制度、労働慣行の問題点とその背景、改革に向けた提言を詳細に述べている。戦後日本を支えてきた「無限定」正社員システムが老朽化したにもかかわらず、それに代わる有効な制度が確立していないことから、企業も個人も人材の重要性に「覚醒」していないという視点だ。
鶴氏自身の調査・考察をはじめ、外国の調査・文献なども豊富に紹介されており、客観的で冷静な分析に終始している。また、調査研究の一方で、2013年から今年7月までの規制改革会議の雇用ワーキンググループ座長を務め、雇用改革に向けて次々と政府に提言する「行動型有識者」としての活動も展開。改革の現状と課題についても、鋭い分析を随所に散りばめている。
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