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2025年4月29日

【ブック&コラム】『冒険する組織のつくりかた』

マネジメントは「軍事」から「冒険」へ

c2504_2.jpg著者・安斎 勇樹
ディスカヴァー・トゥエンティワン、定価2640円 (税込)


 戦略を立案し、人員を投入し、指示を徹底してライバルと競い合うビジネスでは多くの要素が軍事に重なる。その「軍事的世界観」から抜け出そうという提案が本書に通底するテーマだ。多様化と不確実性が増す今は組織と個人の間の齟齬が拡大し、「楽しく働けない」「もう辞めたい」という"脱走"の形で顕在化しつつあると著者は読み解く。そのうえで軍事に対峙する概念を「冒険」に見つけ、組織のあり方をアップデートする方法を探っている。

 軍事的世界観から脱する手がかりでは5つのレンズ(目標・チーム・会議・成長・組織)を挙げ、新しい概念に寄せていく。例えば、目標は「行動を縛り上げる指令」ではなく「好奇心をかき立てる問い」へ、組織は「事業戦略手段」ではなく「人と事業の可能性を広げる土壌」へと捉え方の転換を訴える。

 一方で、軍事的縛りからの脱出は「戦いのない世界」を目指すものではないとも述べ、危機を乗り越える厳しさも併記。まさしくアニメ『ONE PIECE』の世界観が現実の社会組織にフィットする局面を認識させられる。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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