アナログ目線の沁みるエッセイ
著者・平岡 祥孝
PHP研究所、定価990円(税込)
アカデミックな世界、学校教育の現場でキャリアを重ねてきた著者による59話のエッセイ集。新聞に連載していたコラムがベースゆえ、本書では1トピックあたり2ページ半という読みやすく飽きない量にまとまっている。
主に、上司=部下の関係を中心に職場と組織の諸課題を扱っているが、「人望」の要素を掘り下げていくなど、多くがアナログ目線による考察で、それが想定外に沁みる。他にも、仕事観、労働観、キャリア形成、プライド、働きがい、責任と義務、企業人の矜持・美学といった題材を拾い上げ、「筆者の私見だが」と断りながら、じっくり、ゆっくり本質を見極めていく筆運びで一貫している。管理職・リーダーへのアドバイスでは「目標の意味を伝え、目的を情で訴える力」を求め、権力行使への自戒を諭す。
ビジネス系ハウツー本とは違い、人に向き合い、考えを深め、ときにユーモラスに語彙を操る教養の深さと余裕がにじみ、味わい深い。同時に数字や成果パフォーマンスに追われ、大きな忘れ物をしてしまったような焦りの感情も覚える。
(久島豊樹/HRM Magazine より)