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2025年2月 6日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」264・大雪時の休業手当について

Q 記録的な大雪の影響で会社が休業した場合には、労働者に休業手当を支払わなくてはならないのでしょうか。

koiwa24.png 今年は暖冬といわれつつも、各地で大雪の被害が報告されており、事業活動への影響も懸念されます。労働基準法26条には、「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合は、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定められており、「使用者の責めに帰すべき事由」に該当しない場合は休業手当の支払い義務は発生せず、該当する場合は休業手当の支払いが必要となります。「使用者の責めに帰すべき事由」の例としては、例えば原料不足、機械の不具合、流通上における資材入手難、監督官庁の勧告による操業停止、経営難のための資金資材獲得難などが挙げられます。

 記録的な大雪による影響は、人間の力では避けることができないものですので、基本的には不可抗力と認められると考えられます。大雪の影響によって休業した場合には、一般的には天災による不可抗力であると判断され、使用者の責めに帰すべき事由には該当せず、経営上の責任ともいえないことから、休業手当支払いの義務はないと思われます。公共交通機関の運休や道路事情の著しい悪化などによって労働者が出社できない場合には、明らかに不可抗力と認められ、休業手当の支払義務は生じません。

 逆に、電車やバスの運行や道路事情の大きな影響が出るおそれがあるため、具体的な計画運休などの発表がされる前に休業を指示したり、会社の独自の判断によって労働時間を繰り上げて帰宅することを指示したような場合は、天災による不可抗力の休業とは認められず、原則として休業手当の支払いが必要となります。ただし、会社の施設や設備が直接的な被害を受けて労働者に休業を指示したような場合は、使用者の責めに帰すべき理由による休業には該当せず、休業手当の支払いが不要とされます。

 とはいえ、嵐のような大雪の中、使用者が強引に出社の指示をして、結果的に事故が起きて死傷したような場合は、使用者が「安全配慮義務」違反に問われる可能性も皆無ではなく、そうでなくて労働者が通勤途上などで万が一にも事故に巻き込まれるようなことがあっては問題ですから、法律判断といった視点のみで杓子定規にとらわれず、具体的かつ柔軟な状況判断が求められるケースもあるでしょう。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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