Q 労働契約法の無期転換ルールについて、派遣労働者にどのように適用されるのか教えてください。
A 無期転換ルールとは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者からの申し込みによって、期間の定めのない労働契約に転換できるルールのことをいいます(労働契約法18条)。たとえば、契約期間が1年の場合は、契約を5回更新して6年目に無期転換の申し込み権が発生し、その期間中に申し込みをした場合には、無期労働契約に転換することになります。この対象となるのは、原則として契約期間に定めがある有期労働契約が通算5年を超えるすべての人であり、契約社員やパート、アルバイト、派遣労働者などは問いません。
無期転換ルールについては、申し込みの方法や契約期間の通算、無期転換後の労働条件、雇い止めなどをめぐって、実務上のさまざまなテーマがあり、正確に仕組みを理解したり、対応に苦慮する場面も見られたことから、現場で起こりがちな典型的なQ&Aがまとめられ、2024年12月に厚生労働省から公開されました。ここでは、22のQ&Aのうち、派遣労働者に関するものをピックアップします。
「無期転換ルールのよくある質問(Q&A)」(2024年12月、厚生労働省)
派遣社員として勤務されている方も、有期労働契約を結んでいれば、派遣会社(派遣元の企業)と締結している労働契約の通算契約期間が5年を超えた場合、無期転換の対象となり、無期転換の申し込みをすることができます。
この場合、派遣先ではなく、派遣会社に対して無期転換の申し込みをする必要があります。無期転換を申し込んだ場合に労働契約が成立するのも、派遣会社との間となります。
派遣労働者の場合は、無期転換の申し込み権は派遣元に対して発生し、通算契約期間が5年を超えた派遣労働者が派遣元に申し込みをすると、無期契約に転換されます。この場合の無期契約は、正社員として登用されるわけではなく、無期契約の派遣労働者として契約が存続することになります。派遣元としては、無期転換ルールが適用されることで、無期契約の派遣労働者が増加することになるため、そのための労務管理面や運営面の対応を整備することが急務となります。
「登録型派遣」とは、一般に、派遣労働を希望する場合に、あらかじめ派遣会社に登録しておき、派遣をされる時に、その派遣会社と期間の定めのある労働契約を締結し、派遣先に派遣されることをいいます。
そのため、登録型派遣で働く方の場合は、派遣される都度、有期労働契約を締結することとなりますが、この場合も派遣会社との間で無期転換ルールが適用されます。したがって、同一の派遣会社との間で通算契約期間が5年を超えた場合、無期転換申し込み権が発生し、その契約期間の初日から末日までの間、いつでも無期転換の申し込みをすることができます。(なお、「登録型派遣」の場合、単に派遣会社に登録している状態では、一般に、労働契約は結ばれていませんので、その期間は、通算契約期間にカウントされません)。
なお、労働契約がない期間(無契約期間)が一定以上あると、無契約期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含まれなくなる(クーリングされる)場合があります。
登録型派遣の場合にも、派遣以外の直接雇用と同じく無期転換ルールが適用されるため、同様の要件を満たすことで、派遣元に無期転換の申し込みをすることができます。この場合の通算の対象となる契約期間は、当然のことながら労働契約が締結されている期間ですので、派遣元に登録されている期間は含まれません。登録型の場合は、ひとつの派遣就業が終わって、次の就業までの期間が空くことも少なくないため、クーリング期間(同一の使用者との間で有期労働契約を締結していない期間)への理解と対応が重要となります。
クーリング期間は、まず、無契約期間の前の通算契約期間が1年以上の場合と、1年以内の場合に分かれます。1年以上の場合は、無契約期間が6ヶ月以上あるときはクーリング期間となり、無契約期間が6ヶ月未満の場合は、クーリング期間とはなりません。1年未満の場合は、下の図のような取り扱いとなります。少し複雑な制度となっていますので、分かりにくいと感じた人はこの機会にしっかり把握しておいていただきたいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)