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2024年12月10日

【ブック&コラム】『それでも、「普通の会社員」はいちばん強い』

やりがいと仕事の関係を問い直すヒント

c2311_1.jpg著者・新井 健一
日経BP/日本経済新聞出版、定価1760円(税込)


 「キャリアは誰のものか?」と問われた際に躊躇を覚える「普通の会社員」が読者ターゲットだと著者は語る。

 数十年にわたり"このままだと大変なことになるぞ"とあおられ続けてきたものの、ほとんどはオオカミ少年の脅しであり、日本の会社員のスキルはそれほど悪くなく、これからも8割はこれまでやってきたことで大丈夫だと冷静に現状を捉える。その根拠は、基礎学力があり、真面目で親切という日本人の特性だという。普通の会社員の目配り・気配りができれば、AI時代が到来しても共存していけると肯定的に現在地を確認。そのうえで、プラスアルファの2割の要素として、会社から離れてもやっていける力量を想定し、その鍛え方、磨き方の考察を重ねていく。

 論の運びは時に俯瞰的かつ奥行の幅もあるため単純ではないが、本書の冒頭にはあえて「結論」が鮮明に記されているので、時々立ち返りながら読み込んでいくと理解は深まるだろう。やりがいと仕事の関係を慎重かつ複眼的に考える内容であり、キャリア研修の課題図書に挙げてもいい。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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