定年前後のキャリア選択のリアル
著者・奥田祥子
光文社、定価968円(税込)
複数のビジネスパーソン個々人のキャリアを長期にわたって定期的に対面取材している著者が、定年を迎えたシニアたちの実態を生々しく描き出す。
定年前後のキャリアパターンを5つ(①継続雇用、②転職、③フリーランス、④NPO社会貢献、⑤女性)に分類し、計15人のケースを取り上げている。一人ひとりの現役時代の言動と今の状態とを比較しながら、転機での迷いと決断、その背景にある出来事や心情をドキュメントタッチで考察する力作だ。なかでも、必ずしも成功事例ではないストーリーには興味が尽きない。若い頃は「専門職を極める」と語っていたのに、リストラからの生き残り、出世の誘惑等の諸事情で管理職コースに進み、結果的には役職定年を迎えて不活性状態に追い込まれてしまったなどは典型例だろう。自分に自信があり、行動力のある人でも事前の計画とは違う道を歩んだり、出会い頭のタイミングで意外なキャリアチェンジを選択したりしている。
怒り、悔恨、沈黙ほか情動的な機微に触れながら、シニアのキャリアを考えさせられる。
(久島豊樹/HRM Magazine より)