変化する権力構造を読み解くヒント
著者・榎本 秋
エムディエヌコーポレーション、定価1100円(税込)
「ナンバー1の独裁よりナンバー2に任せたほうがうまくいく」という歴史法則を軸に、幕末から55年体制の終焉までをかみ砕いて追う歴史コラム。一般には「ナンバー1を象徴的に置き、実務はナンバー2が仕切る」という構図で捉えがちだが、権力の実態はそれほど単純ではないと本書は総括している。
まず、明治維新から第二次大戦までは天皇をナンバー1に認めたうえで、内閣制成立以後、総理大臣をナンバー2に位置づける。GHQによる占領期を経て後は、総理大臣をナンバー1と見立て「さて、ナンバー2は誰か?」と掘り下げていく。基本は総理大臣を輩出する与党有力者が該当するとして自民党4役(幹事長・総務会長・政調会長・選対委員長)と派閥に着目。格では副総理、役目では内閣官房長官がナンバー2のはずだが、肩書と実質の権力が比例しない面白さも見つけ、昭和の妖怪、目白の闇将軍、根回しのキングメーカー、政界のドンといった存在を例示している。
変化する権力構造のダイナミズムがよく理解でき、好奇心を刺激されそう。
(久島豊樹/HRM Magazine より)