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2024年10月17日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」249・最低賃金の引き上げとパートタイマーの就業

Q 最低賃金の引き上げにともなってパートタイマーの就業条件が見直されるケースがあると思いますが、どのように考えるべきでしょうか。

koiwa24.png 今年も最低賃金が10月1日から順次引き上げられ、全国平均の引き上げ額は過去最大の51円となりました。これによって、「扶養の範囲内で働きたい」と希望するパートタイマーについては、具体的な就業条件の見直しなどが必要となるケースがあります。

 例えば、筆者の地元の三重県の例でいうと、最低賃金は、973円から1023円に50円引き上げられましたが、年収130万円の範囲内で働きたいと希望する人にとっては、具体的に以下のような影響が出ることになります。

【例】最低賃金の引き上げにともなって、時給を「980円」から「1030円」に引き上げる場合(交通費は仮に1日300円×20日=月6000円とする)

(引き上げ前) 時給980円、交通費6000円 (引き上げ後) 時給1030円、交通費6000円
週25時間勤務(1日5時間×週5日)
980円×5時間×週5日×4週×12か月=117万6000円
交通費6000円×12か月=7万2000円
合計:124万8000円(概算)
週25時間勤務(同じ)
1030円×5時間×週5日×4週×12か月=123万6000円
交通費6000円×12か月=7万2000円
合計:130万8000円(概算)
→年間130万円を超える!


 あくまでも概算であり、地域や業種による違いのほか、賃金形態や交通費などの手当によっても結果が変わりますが、引き上げ後のケースにおいては、「扶養の範囲内で働きたい」と希望するパートタイマーについて、何らかの対応が必要となります。一般的には、130万円の壁との兼ね合いで数時間の就労制限を行うことになりますが、雇用契約内容の変更となるため、労働者本人の同意を得て、あらためて雇用契約を交わす必要があります。

 あわせて、1日の就業時間が短縮されることにともなう業務への影響をカバーするため、多くの場合は新たにシフト制などを組むことで対応することになります。この場合も、会社からの一方的な指示で行うと思わぬ労働者からの反発を招いてしまったり、場合によっては不利益変更に該当しかねないケースもありますので、現場での話し合いを中心に円満な対応に心掛けたいものです。

 最低賃金の引き上げとパートタイマーの就業をめぐる労務管理については、最低賃金の水準が比較的低い地方を中心にこれからも直面するテーマとなりますので、できるかぎりスケジュールやプロセスに余裕を持って、丁寧に向き合っていきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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