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2024年10月 3日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」247・フリーランス・事業者間取引適正化等法⑨

Q フリーランス新法における「違反行為への対応」について、概要を教えてください。

 今まで8回に渡って、フリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)について解説してきました。このテーマの最終回の今回は、「違反行為への対応」について整理します。

(申出等)
第6条 業務委託事業者から業務委託を受ける特定受託事業者は、この章の規定に違反する事実がある場合には、公正取引委員会又は中小企業庁長官に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
2 公正取引委員会又は中小企業庁長官は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。
(以下略)

(申出等)
第17条 特定業務委託事業者から業務委託を受け、又は受けようとする特定受託事業者は、この章の規定に違反する事実がある場合には、厚生労働大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
2 厚生労働大臣は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。
(以下略)

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 新法ではこのような「申出等」の規定が置かれ、フリーランスは、発注事業者に法違反と思われる行為があった場合には、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に対して、その旨を申し出て、適切な措置をとるべきことを求めることができます。行政機関は、申出の内容に応じて、報告徴収や立入検査といった調査を行い、発注事業者に対して指導や助言、勧告を行い、勧告に従わない場合には、命令や公表をすることができます。命令違反に対しては、50万円以下の罰金に処せられることになります。発注事業者は、フリーランスが行政機関の窓口に申出をしたことを理由として、契約解除や今後の取引の不更新などの不利益な取扱いをしてはなりません。  

 なお、第1回でも触れたように、義務や違反行為の内容によって、以下のように申し出先の行政機関が分類されていますので、あらためて整理しておきます。

公正取引委員会、中小企業庁(「取引の適正化」) 厚生労働省(「就業環境の整備」)
・取引条件の明示義務(第3条)
・期日における報酬支払義務(第4条)
・発注事業者の禁止行為(第5条)
・募集情報の的確表示義務(第12条)
・育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)
・ハラスメント対策に係る体制整備義務 (第14条)
・中途解除等の事前予告・理由開示義務(第16条)


 フリーランスが担当省庁に申出を行った場合、担当省庁が調査をした上で、発注事業者に対する報告徴収や立入検査を実施し、指導や助言が行われることになります。指導・助言に従わない場合は、勧告が行われ、それにも従わない場合には、命令・公表が実施され、命令違反に対して罰則が適用されるという流れになります=図

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 罰則については、50万円以下の罰金(24条)、法人等に対する両罰規定(25条)、20万円以下の過料(26条)が定められています。

50万円以下の罰金 ・公正取引委員会への命令違反(9条1項)
・厚生労働大臣への命令違反(19条1項)
・中小企業庁長官、公正取引委員会への報告違反、虚偽報告、検査虚偽、忌避(11条1項)
・厚生労働大臣への報告違反、虚偽報告、検査虚偽、忌避(20条1項)
20万円以下の過料 ・厚生労働大臣への業務委託に関する報告違反、虚偽報告(20条2項)


 これらの罰則はあくまで行政が行う勧告に従わず、さらに命令違反が起こった場合に適用されることが予定されていますが、罰則の規定自体はとても重いものだということができます。フリーランスはもとより、発注事業者や今後、発注事業者になる可能性がある事業者は、今回施行される法律の内容をもう一度よくおさらいした上で、これからの実務に対応していきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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