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2024年9月 5日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」243・フリーランス・事業者間取引適正化等法⑤

Q フリーランス新法で定められた「募集情報の的確表示義務」とは、どのような内容なのでしょうか。

 令和6年11月1日から施行されるフリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、第12条で「発注事業者の禁止行為」(募集情報の的確表示義務)について定められています。

(募集情報の的確な表示)
第12条 特定業務委託事業者は、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(次項において「広告等」という。)により、その行う業務委託に係る特定受託事業者の募集に関する情報(業務の内容その他の就業に関する事項として政令で定める事項に係るものに限る。)を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。
2 特定業務委託事業者は、広告等により前項の情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。

koiwa24.png 今回の法律では、発注事業者が広告などによってフリーランスを募集する際には、その情報について、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならない、とする義務が課されました。フリーランスは労働者ではなく事業者ですから、発注事業者との間の契約には当然労働法が適用されることはなく、その募集にあたっても職業安定法などの規制の対象外ですが、事実上の力関係によって発注事業者に有利な契約が締結されるケースもあり、両者の取引上のトラブルなども散見されたため、一定の予防措置として、新たなルールが設けられることになりました。

 発注事業者は、フリーランスの募集する場合に表示する項目について、以下の①~⑤の内容について表示する場合には、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示となっていないか、正確かつ最新の内容となっているか、について確認する必要があります。フリーランスと発注事業者との募集情報に関する認識の違いをできるだけなくし、取引上のトラブルを防止するため、発注事業者は可能な限り具体的な内容を募集情報に表示し、募集に応じた者に対しても下記の事項を明示するとともに、内容を変更する場合には、変更内容を明示することが求められます。

的確表示義務の対象となる募集情報の事項

①業務の内容 ・成果物または役務提供の内容
・業務に必要な能力または資格
・検収基準
・不良品の取扱いに関する定め
・成果物の知的財産権の許諾・譲渡の範囲
・違約金に関する定めなど
②業務に従事する場所・期間・時間に関する事項 ・業務を遂行する場所、納期、期間、時間など
③報酬に関する事項 ・報酬の額(算定方法を含む)
・支払期日
・支払方法
・交通費や材料費等の諸経費(報酬から控除されるものも含む)
・成果物の知的財産権の譲渡・許諾の対価など
④契約の解除・不更新に関する事項 ・契約の解除事由
・中途解除の際の費用
・違約金に関する定めなど
⑤フリーランスの募集を行う者に関する事項 ・フリーランスの募集を行う者の名称
・業績など


 よくあるトラブルの例としては、「〇〇業務、時給××円」などと労働者の募集と混同させる表示をしていたり、「年収〇〇万円見込み」などと報酬などについて実際よりも高額であるかのように表示していたり、「東証1部上場〇〇株式会社勤務」などと実際に業務委託を行う事業者と別の事業者名で求人を掲載していたりするケースが見られますが、いずれも不適切ですから改善をする必要があります。当事者の合意に基づいて、広告などに掲載された募集情報から、実際に契約する際の取引条件を変更することは差し支えありませんが、事後的なトラブルが発生することのないよう、十分な合意手続きと書面による確認を徹底していきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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