組織人と職業人の仕事観を考察
著者・阿部 真大
光文社、定価924円(税込)
「組織人」と「職業人」の違いを多元的に考察する大学教員の手による論考だ。先行研究を縦覧する学術寄りのスタイルをとりつつも、章によっては個人の事情を開陳したり、サブカル作品を評価したりするなど、幅のある記述があって興味深い。
真面目なところでは、「やりがい搾取」の問題を第一に挙げる。職業の社会的役割が不明確なままだと無限定なお客様ファーストに陥るリスクがあるとして、「お客様は神様ではない」という社会的な合意があるべきだと語る。著者個人の側面からは、組織人と職業人のバランスについての悩みを打ち明ける。学務に追われると研究を怠けた状態に、研究を優先すると学務を怠けていると見なされると相対化したうえで、「怠けは悪いことなのか」と問う。
文化面では池井戸作品(『半沢直樹』等)を俎上に載せ、会社員と職人の対比から職業観を探る。また、4コマ漫画『かりあげクン』を取り上げ、職場での「茶化し」「ズラし」の機微を分析し、組織の安定性に左右されずに軽やかに生きるヒントになりうると論じている。
(久島豊樹/HRM Magazine より)