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2024年8月15日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」240・フリーランス・事業者間取引適正化等法②

Q フリーランス新法で定められた「取引条件の明示」とは、どのような内容なのでしょうか。

 令和6年11月1日から施行されるフリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、第3条で「特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等」(取引条件の明示)について定められています。

(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
第3条 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。

2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。


koiwa24.png 発注事業者(業務委託事業者)がフリーランス(特定受託事業者)に対して業務委託をした場合は、直ちに、その取引の条件などについて、書面または電磁的方法により明示しなければなりません。発注事業者とフリーランスとの間に多発しているトラブルを防ぐためには、まずお互いの取引条件をめぐる認識の相違を減らすことが重要という観点から、厳格な明示義務が課せられることになります。取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象となるため、発注事業者がフリーランスである場合にも課されます。

 明示方法について、書面か電磁的方法(電子メール、SNSのメッセージ、チャットツールなど)のいずれを採用するかは発注事業者が選択できますが、口頭による伝達などは認められません。フリーランスから書面の交付を求められたときは、「フリーランスの保護に支障を生ずることがない場合」を除いて、遅滞なく、書面を交付しなければなりません。この例外はインターネット取引などの場合に限定されるため、原則としては、フリーランス側の理解が得られない場合は書面とすることが求められるでしょう。

 なお、「書面」とは、必ずしも契約書である必要はなく、様式などはまったく自由であり、明示事項が適切に印刷されたものであれば差し支えありません。「電磁的方法」については、本文に明示事項を記載する方法だけではなく、明示事項が掲載されたウェブページのURLを記載したり、PDFなどを添付して送ることも認められます。ただし、SNSのメッセージなどを利用する場合は、メッセージが削除されたり、閲覧ができなくなる可能性もあるため、事前に発注事業者とフリーランスの双方が納得がいく方法として、スクリーンショットなどで明示事項の保存を行うなどの対応を並行することが望ましいでしょう。

 具体的な明示事項は、以下となります。

明示すべき事項
①業務委託事業者および特定受託事業者の名称
②業務委託をした日
③特定受託事業者の給付の内容
④給付を受領または役務の提供を受ける期日
⑤給付を受領または役務の提供を受ける場所
⑥給付の内容について検査する場合は、検査を完了する期日
⑦報酬の額および支払期日
⑧現金以外の方法で報酬を支払う場合は、支払方法に関すること


 これらの明示事項の中でも、もっとも留意が必要なのは、⑦報酬の額および支払期日でしょう。業務委託の段階で、具体的な報酬額の明示が困難なやむを得ない事情がある場合は、金額に代えて「算定方法」を明示することも認められますが、この場合は、報酬額の算定根拠が確定することで、自動的に具体的な金額が確定するものである必要があります。単価表などについて別紙を明示する場合は、その旨を具体的に明示した上で、さらに金額が確定した際には、速やかに金額を明示する必要がある点にも注意したいものです。いずれにしても、報酬額の内容が具体的に明示される必要がありますので、明示義務が果たされなかったり、不明確な明示にならないように万全を期すことが求められます。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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