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2024年8月 1日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」238・派遣事業の許可申請と取締役の登記

Q 労働者派遣事業の許可申請の際、取締役の登記が適切にされていないことを理由に申請の受付がされませんでした。どのような対応が必要となりますか。

koiwa24.png 労働局の窓口で労働者派遣事業の許可申請をする際、法人の場合には、原則として登記事項証明書の提出が求められます。ただし現在は、労働局が登記情報連携システムにより入手できる場合には、添付を省略することが可能という取り扱いとなっています。

 労働局では、この書類によって、申請法人の本店住所、事業目的や役員などの内容を具体的に確認することになります。これによって、申請書に記載された役員が、現存する役員であるかどうかの照合を行いますが、役員の退任、就任などの登記が適切に行われていない場合には、申請者に対してその旨の確認・照会が行われることになります。

 役員の任期については、登記事項ではありませんので、定款によって確認します。定款で定められた任期をすでに超えているにも関わらず、退任登記、就任登記または重任登記がされていない場合には、登記事項証明書によって、現在の役員を正確に把握することができないため、申請書類の審査を進めることができず、窓口における受付がされなかったものと考えられます。

 ところで、株式会社の取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までですが、定款や株主総会の決議によって、短縮することもできます。また、すべての株式に譲渡制限を設けている会社の場合は、最長10年までその任期を伸長することもできます。

 ご質問のケースで、定款を変更して取締役の任期を伸長していたため、実際には取締役の任期は満了していなかったという事実があるならば、変更後の定款か、変更に関する株主総会議事録を添付することにより、申請が可能となることもありますので、事情に応じて確認したいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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