リーダーの器を読み解くエッセイ
著者・桃野 泰徳
新潮社、定価836円(税込)
証券会社勤務を経て複数の企業の経営再建を手がけてきた著者がリーダー論を語る。人望を失うリーダー・組織を破壊しているリーダーと、成功したリーダーを対比させ、望ましいリーダーシップの姿を探る論考だ。
ただ、本書はいわゆるビジネス書ではなく、「話は変わるが」「話は戻るが」と次々に場面が切り替わる独特のレトリックに特徴のあるエッセイで、古今・内外・公私を縦断する題材から"上司のあり方"に収れんさせていく筆運びが面白い。例えば、織田信長が古参・佐久間信盛を追放したやり方を引き合いに、80代ホステスが現役で働く大阪ミナミのキャバレーの巧みな経営を説く。あるいは、高級ラーメン店の失敗とAKB48『365日の紙飛行機』の歌詞、部数減が止まらない新聞社の凋落と"常に新しい老舗"であり続けるグンゼの経営判断、といった比較も綴っている。
伏見工業高校ラグビー部の「可能性を信じる力」、現場の状況・実態を知ったうえで口を出さずに部下の成長を見届けた大山巌の「器の大きさ」などのトピックも腹落ちしやすい。
(久島豊樹/HRM Magazine より)