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2024年7月25日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」237・令和6年度ハローワーク別地域指数の誤りへの対応

Q 令和6年度の職業安定局長通達のうち、「ハローワーク別地域指数」の一部に誤りがあったことにより、派遣元として対応が必要だと聞きましたが、具体的にはどうすべきでしょうか。

koiwa24.png 派遣元としては、誤りのあった地域指数を参照して労使協定を締結されていた場合については、訂正後の地域指数による一般賃金水準を確認し、その水準を満たすように労使協定の改定をする必要があります。この対応については、一定の期間が必要となることから、令和6年9月30日までを経過措置期間とされ、この期間内は現行協定も有効とされ、この間に必要な見直しを行うことになります。

 この場合、4月当初から協定見直しまでの間について、現行協定と新協定との間で賃金水準に差が生じるケースがあり、この金額をどのように補うかを労使で検討する必要があります。具体的に、事業主の負担となる場合に、その取り組みを支えるための支援策として、「人材確保等支援助成金(派遣元特例コース)」が新設され、活用が促されています。助成金の内容は、以下の通りです。

【人材確保等支援助成金(派遣元特例コース)】

・支給対象となる事業主
1 令和6年4月1日以降、派遣労働者を雇用する派遣元
2 令和7年3月31日までの間に、賃金制度の整備又は改善を実施し、かつ、(1)又は(2)に該当する派遣元  
(1)新協定の締結までの間に旧協定の定めにより、差額を賃金として支払った派遣元  
(2)派遣労働者の賃金を増額し、新協定を締結する日までに増額分を賃金として支払った派遣元

・助成額
5万円に派遣労働者1人当たり1万円を加算した合計額
(※必要経費の合計が上記合計額を超える場合は、当該経費の総額を上限として支給)

・申請に必要な書類
1.支給申請書
2.派遣労働者名簿(様式第1号 別紙1)
3.整備又は改善を行った賃金制度の内容及び当該制度を実施したことが確認できる書類
4.支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
5.支払方法・受取人住所届 ほか


 労働局からすべての派遣元に「お詫びと対応のお願い」が通知されていますが、現行協定において「ハローワーク別地域指数」が適用されている場合には、必要な改定作業および差額賃金などの対応を進める必要があります。派遣事業報告書なども確認しつつ、具体的な派遣元と対象労働者について処理していくことになりますが、緊急的な措置である人材確保等支援助成金(派遣元特例コース)は、状況に応じて有効活用しましょう。また、今回の事案が事業報告書をめぐる対応や労働局の調査などに与える影響についても冷静に見守りつつ、労働局などから照会や確認があった場合には、誠実に協力していきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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