不祥事の真相を組織構造から分析
著者・中原 翔
光文社、定価924円(税込)
いわゆる「組織ぐるみ」と批判された不祥事を対象に、研究者のポジションから現象の全体像を捉え、問題のありかに迫る論考だ。三菱自動車・スズキの燃費試験、東芝の不正会計、小林化工・日医工の品質不正に加え、大川原化工機の冤罪事件では、警視庁公安部の誤謬を取り上げる。
いずれも私利を動機とした横領事件などとは異なり、組織人の立場から「正しい」と思って判断したことが、法規の定める「正しさ」と差異を生じさせ、事件化したものと読み取れる。悪意・動機があって不正が実行されたというより、第三者委員会等の調査による逆算的な検証プロセスを経ないと構造と原因が特定できない複雑さを描き出す。
個人が「正しさ」を追求すると、それが重なって組織の不正が加速し、やがて組織が崩壊することで社会の破壊を招く「社会的雪崩」(ソーシャル・アバランチ)のリスクを指摘。一方で、不正を防ぐ正解はないとも述べ、固定的・絶対的な「正しさ」のもろさを警戒し、複数の流動的な視点で相対化していく重要性を訴えている。
(久島豊樹/HRM Magazine より)