Q 10月からの社会保険の適用拡大について、1週間の所定労働時間の判断の実務的なポイントについてお教えください。
A 前回に引き続き、社会保険の適用拡大について、厚生労働省の「短時間労働者に対する健康保険 ・厚生年金保険の適用拡大 Q&A集」の内容をみていきます。今回は、「4.1週間の所定労働時間が20時間以上」について触れます。
10月1日から施行される改正により、常時50人超の企業に使用される「短時間労働者」は、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。短時間労働者とは、勤務時間・勤務日数が常時雇用者の4分の3未満で、①週の所定労働時間が20時間以上であること、②雇用期間が2ヵ月を超えると見込まれること、③賃金の月額が8.8万円以上であること、④学生でないことをすべて満たす従業員のことをいいます。
①の要件については、所定労働時間は、就業規則や雇用契約書で定めている通常の勤務時間で確認します。必ずしも実際に稼働した労働時間で判断するわけではありませんので、時間外労働などが増えたことによって結果として20時間以上となったような場合は対象とはなりません。
4週5休制などの変則的な勤務形態によって短時間労働者の勤務時間が週単位
で定まっていない場合は、その周期の1週間の所定労働時間を平均して所定労働時間を割り出すことになります。4週5勤制の場合であれば、その4週間の所定労働時間の合計を4週で除して平均を割り出すことで、所定労働時間を求めます。
所定労働時間が月単位で定められている場合は、「1か月の所定労働時間×12÷52」の計算式で1週間の所定労働時間を割り出します。所定労働時間の賃金のみが対象となりますので、割増賃金や通勤手当、家族手当、精皆勤手当などの「最低賃金に参入しない」と法令で定められている手当や、臨時手当、期間ごとに支給される賞与などは、月額賃金に含まれません。
3月、4月の繁忙期の所定労働時間のみがそれ以外の月よりも長く設定されていたり、夏季や冬季の休暇のために8月や12月、1月の所定労働時間のみが短く設定されているような場合は、年間の標準的な所定労働時間を反映するために、それらの例外的な所定労働時間の月を除いて、それ以外の月の所定労働時間を12分の52で除して、1週間の所定労働時間を割り出します。
所定労働時間は、就業規則や雇用契約書で定めている通常の勤務時間で確認するのが原則ですが、業務内容が変更されたり、事実上の勤務形態が変わったことなどにより、実際の労働時間が週20時間以上となり、引き続きこの状態が継続していく場合には、実態に合わせた適用をすることが求められます。そこで、実際の労働時間が連続する「2か月」において週20時間以上となった場合で、引き続きこの状態が続いていたり、続くことが見込まれる場合には、実際の労働時間が週20時間以上となった月の「3か月目の初日」に被保険者の資格を取得することになります。施行日の10月1日の時点において、このような状態にある場合には、施行日から被保険者の資格を取得します。
なお、「連続する2か月」において要件に該当し、引き続き同様の状態が続いている(見込まれる)場合には、「3か月目の初日」に被保険者の資格を取得するという仕組みについては、所定内賃金が月額8.8万円以上か否かの判定においても同様の考え方をしますので、例外的なケースに共通する重要な適用のルールである点をしっかり押さえておきたいところです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)