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2024年6月13日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」231・社会保険の適用拡大Q&A集②

Q 10月からの社会保険の適用拡大について、特定適用事業所の実務的なポイントについてお教えください。

koiwa24.png 10月1日から、常時50人超の企業の社会保険の適用拡大について、厚生労働省から「短時間労働者に対する健康保険 ・厚生年金保険の適用拡大 Q&A集」が公開されています。今回は、「2.特定適用事業所」について触れることにします。

 「特定適用事業所」とは、1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が101人以上となることが見込まれる企業等のことをいいます。今回の改正によって、この人数規模が「常時50人を超える」に変更されます。

問7 使用される被保険者の総数が常時50人を超えるか否かの判定は、適用事業所ごとに行うのか。


 「常時50人を超える」かどうかの判定は企業ごとに行い、法人の場合は同一の法人番号の事業所に使用される被保険者の総数、個人事業所の場合は、適用事業所ごとに使用される被保険者の総数で判定します。あくまで企業ごとの判定となりますので、グループ企業や資本関係などを有する企業どうしであっても合算するという考え方ではなく、登記上の法人単位で判定することになります。
 この場合の「被保険者」は、あくまで施行日に厚生年金保険の被保険者である人を指しますので、今回の改正で適用拡大の対象となる短時間労働者や70歳以上で健康保険のみ加入している人はカウントされません。

問9 「被保険者の総数が常時50人を超える」とは、どのような状態を指すのか。どの時点で常時50人を超えると判断することになるのか。


 被保険者の総数が「12か月のうち、6か月以上」について 50人を超えることが見込まれる場合を指し、基本的な考え方は法人も個人事業所も同じです。施行日において、被保険者の総数が12か月のうち、6か月以上50人を超えたと確認できる場合は、特定適用事業所に該当したものとして扱われ、機構(事務センター等)から事業所に「特定適用事業所該当通知書」を送付されることになります。

問12 施行日から特定適用事業所に該当する適用事業所や該当する可能性があ る適用事業所に対して、あらかじめ機構から何らかのお知らせは送付されてくるか。


 具体的な通知や実務の流れは、以下の通りです。

【9月上旬】
・「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が送付(令和5年10月から令和6年7月までの各月のうち、被保険者の総数が6か月以上 50人を超えたことが確認できる場合)
・「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」が送付(令和6年8月に、令和5年10月から令和6年7月までの各月のうち、被保険者の総数が5か月50人を超えたことが確認できる場合)
【10月上旬】
・「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」が送付(令和6年9月に、令和5年10月から令和6年8月までの各月のうち、被保険者の総数が5か月50人を超えたことが確認できる場合)


 令和5年 10 月から令和6年7月までの各月のうちで要件が確認できる場合は「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が送付されますが、それに該当しない場合は、令和6年8月と9月に確認が行われ、「令和5年10月から令和6年7月までの各月のうち、被保険者の総数が5か月 50 人を超えたことが確認できる場合」には、9月上旬もしくは10月上旬に「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」が送付されます。この場合の確認の要件は、6か月ではなく「5か月」となっています。

 上記のように6か月以上 50 人を超えたことが機構で確認できなかった場合でも、事業主が特定適用事業所に該当すると判断した場合は、事務センター等へ「特定適用事業所該当届」を届け出なければなりません。逆に、「特定適用事業所該当事前のお知らせ」や「特定適用事業所該当通知書」が送付されてきたものの、施行日前に、被保険者総数が 50人を超えなくなった場合は、「特定適用事業所該当取消申出書」を事務センター等へ届け出て、取り消しの手続きを取ることになります。

 適用拡大にともなって特定適用事業に該当する手続きは、かなり複雑な論点を含んでいるため、事前の情報収集や実務整理が必要な場面が多いと考えられます。施行日前後の実務の流れをしっかりと押さえて、確実な対応をはかっていきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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