経営の概念をパロディで読み解く
著者・岩尾 俊兵
講談社、定価990円(税込)
学者の手による「経営学ガイド」かと思ってページをめくると、読者の脳内は激しくざわつくはずだ。そしてこの本は風刺にあふれた哲学エッセイなのだとジャンルが分かれば内容理解は一気に加速する。この語り口を著者自身は「令和冷笑体」と定義づけている(「昭和軽薄体」を意識したジョーク)。
15のテーマ(貧乏・家庭・恋愛・勉強・虚栄・心労・就活・仕事・憤怒・健康・孤独・老後・芸術・科学・歴史)を扱い、様々な事象に内在する目的と手段の倒錯をえぐり出していく。例えば,顧客のいない「仕事」は無意味な作業ないし運動にとどまり「エクセル開閉体操」に過ぎないと表現する。ただ、皮肉を語る背景には、機能すべき経営が失われている状態への危機感があり、その思いは真摯かつ熱量も高い。
15のお題と細目にちりばめられた数々のパロディにどこまで気づき笑えるか、読者を試す文芸的たくらみも十分の問題作。「経営学は文学の力を借りないと進歩できない」と、ぶっ飛んだ企画に挑んだ動機を最後に打ち明けている。
(久島豊樹/HRM Magazine より)