Q 労働者派遣事業の許可申請を行いたいと考えています。提出書類として求められる登記事項証明書について、注意点を教えてください。
A 労働者派遣事業の許可申請の際、法人の場合は添付書類として登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を提出します。現在は、労働局が登記情報連携システムにより入手できる場合は添付を省略できますが、登記事項証明書の内容は申請書作成においても重要な資料となりますので、最新の証明書を取得しておくことをお勧めします。労働局が登記事項証明書について確認する、申請法人の本店住所、事業目的、役員などのポイントを以下に整理します。
①本店住所
申請書に記載する住所は、登記事項証明書の記載と少しでも相違があると修正が求められます。例えば、登記上の住所が「○○町三丁目2番1号」となっているところ、申請書に「○○町3ー2ー1」と記載されていると修正対象になります。「○○町3丁目2番1号」もこのままでは受付されません。完全に表記が同じである必要があります。
②目的
登記事項証明書の事業目的に、「労働者派遣事業」を行う旨の記載が必要です。かつては届出制の「特定労働者派遣事業」と許可制の「一般労働者派遣事業」の2つの区分がありましたが、平成27年の改正派遣法の施行により特定労働者派遣事業は廃止され、すべて許可制に一本化されているため、名称はすべて「労働者派遣事業」となります。
③役員
登記事項証明書により、申請書に記載された役員の照合、確認を行いますが、役員の任期満了による退任や新たな役員の就任などの登記が適切に行われていないと照合ができません。役員の任期は登記事項ではないため定款で確認しますが、定款で定められた任期を超えているにもかかわらず、その後の登記がされていない場合は、現在の役員を正確に把握することができないので、申請書の受付がされません。
なお、株式会社の取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までですが、定款や株主総会の決議によって、短縮することもできます。また、公開会社ではない株式会社の取締役の任期は、定款で定めることにより、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することもできます。
申請準備の際に3か月以内に取得した最新内容のものを添付すれば問題がありませが、意外な落とし穴に気づいていなかった場合などは、その後の登記手続きに予想以上の日数を要して申請のスケジュールに影響することもありますので、事前に十分確認することをお勧めします。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)