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2024年5月 7日

【ブック&コラム】最低投票率は民主制の真の危機

 4月28日に3選挙区で行われた衆議院補欠選挙は、自民党の不戦敗も含めて立憲民主党の全勝となった。自民の体たらくを思えば予想された結果とはいえ、国会もマスコミも「自民党政治崖っぷち」「政権交代の前兆か」など、もっぱら解散総選挙の行方に焦点を当てている。

c240312.jpg しかし、政党間の勝ち負けよりもっと重要なことは、3選挙区とも投票率が過去最低になったことではないか。島根と長崎は長老議員が牛耳って来た地域であり、東京は汚職や選挙違反で2人続けて現職議員が逮捕された地域。メディアはこぞって自民の「裏金体質」「違法体質」を糾弾して選挙民の"怒り"に訴え、政治に対する有権者の意識も高まると思われた。

 ところが、フタを開けてみれば、3カ所とも投票率は過去最低を大幅更新。どの選挙管理委員会もまだ詳しい投票内容を公表していないが(それ自体が問題ではあるにしても)、島根あたりは過去の年代別投票率から推定すれば、今回も20~30代の若者層の投票率は平均以下の可能性が極めて高く、若者層が「何をしても、変わらない」と諦めているとしか思えない。

 これまで何度も指摘されてきた「高齢者選挙」「利害関係者選挙」は、日本の民主主義を歪めてしまった。確かに、すぐには「変わらない」かもしれないが、若者層の投票が増えれば、政治の側も高齢者ばかりに"いい顔"をしているわけにはいかなくなる。投票という行為は単純だが、大きな意味を持つ。それも自ら放棄するのなら、誰も文句など聞いてくれなくなるだろう。

 「棄権も一つの意思表示」と言えなくもないが、現実の立法活動には何の影響ももたらさない。この国の未来を担う若者層の「政治離れ」こそ、政党間の勝ち負けよりもっと深刻な問題ではないだろうか。そこに焦点を当てたメディア記事にほとんど出会わないことにも、日本の民主主義の危機を強く感じる。(俊)

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