賃金が上がる構造改革を提案
著者・原田 泰
発行PHP研究所、定価1210円(税込)
エコノミストによる政策分析の論考。日本の賃金が上がらない事象に対する諸説の誤解を指摘しつつ、マクロ視点での打ち手を模索している。
誤解の1つは「日本はGAFAを生み出せていない」というもの。しかし、GAFAに類する産業がなくても欧州や台湾では賃金が上がっていると論証し、そもそも今の日本がアメリカに全く追いついていない現実を直視すべきだと述べ、産業技術が未成熟でキャッチアップの途上であることの自覚を求めている。誤解のもう1つは「悪い円安論」だとされる。ただ、日本は円高でも不況を経験しており、要は輸入と輸出のバランスの問題だと突き放す。翻って賃金を上げる方策では、高圧経済の効果に期待する。効率的な資本投下により新しい技術を導入し、生産性を高め、1人当たりGDPを伸ばす道筋を示し、その促進の意味で人手不足は悪くないとも語る。
130万円の壁・ゾンビ企業・男女格差など不合理の正体を暴きながら、行政には護送船団式の既得権保護といった全体効率を低下させるような妨害を止めるよう提案している。
(久島豊樹/HRM Magazine より)