コラム記事一覧へ

2024年4月11日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」222・求職者等への職場情報提供に当たっての手引①

Q 求職者等への職場情報提供に当たっての手引きが公表されたと聞きましたが、どのような内容でしょうか。

koiwa24.png 3月29日、厚生労働省から「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」が公表されました。この手引は、厚生労働省における転職経験者や求人企業、民間人材サービス事業者を対象とするヒアリング調査、労働政策審議会職業安定分科会における議論を受けて策定されたものであり、企業における採用活動を行う上で参考とできるよう、現行の労働関係法令などで定められている開示項目や求職者などが求める情報が例示されているほか、企業が職場情報を提供するにあたっての一般的な課題や対応策が示されています。

 少子高齢化が加速し、個人の働き方のニーズがますます多様化する時代にあっては、労働者とのミスマッチを解消し、円滑な労働移動を促進するために、職場情報を適切に開示・提供することが必要であり、とりわけ求職者などが就職前に収集する情報の充実を図ることによって、入社前後の職場に対する印象のギャップを可能な限り解消することで、就職後の早期離職の防止やエンゲージメントの向上の一助となることが期待できます。このような観点から、手引では、企業の情報の開示項目として、①労働者の募集に当たり開示・提供するもの、②労働者の募集の有無にかかわらず定期的な公表が求められるもの、または公表することが望ましいとされているもの、③資本市場において公表する非財務情報が整理されています。

 「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」の概要は、以下の通りです。

(1)職場情報の提供時期・提供方法
ウェブサイト、求人票や募集広告での開示のほか、多様な提供方法がある
・企業説明会、選考前の面談等における提供
・職業紹介事業者を経由して提供
・選考に係る面接の場での提供・所属予定部署職員等との意見交換、職場見学 の実施
(2)提供する情報の量
過度に多い情報の提供は、①かえってわかりづらく、②必要以上に応募者を絞り込む可能性がある
⇒情報の性質等に合わせて、上記(1)の多様な提供方法を活用しながら提供することも有効
(3)資本市場における人的資本に関する情報の活用について
資本市場において開示が進められている人的資本に関する情報を労働市場向けに 活用することも有効
(4)数値情報の提供
法令によるものではなく、任意に提供する数値情報は内容が不明確だと求職者等 の誤解を招く可能性がある
⇒用いている数値の定義、算出方法を明示
(5)実績が低調な取組等に係る情報の提供
採用活動上、不利な影響をおよぼす可能性が懸念される情報も誠実に提供するこ とが望ましい
⇒情報提供に当たり、取組状況、経年変化、KPI、今後の方針等を併せて提供
(6)情報の正確性
求職者等へ提供する情報は、入社後のミスマッチが可能な限り生じないよう、より実態に近い正確な内容を反映したものである必要があり、定義等があいまいな情報、長期間にわたり更新されていない情報等は 見直す必要がある
⇒過度の負荷にならない範囲で情報を更新するとともに更新した時期等を併せて提供。導入している制度等はその有無だけでなく、利用状況等も併せて提供
(7)求職者等への情報提供に係る支援
ウェブサイトの更新やウェブサイト構築に係る負担が大きい場合やその他より幅広い情報提供を希望する場合
⇒しょくばらぼの活用
(8)中小企業等における情報発信
人材確保に向けた職場環境の整備等に取り組んでいる情報等、積極的な発信が効果的
⇒しょくばらぼの活用


 情報提供にあたっては、職場情報総合サイトである「しょくばらぼ」を有効活用したいものです。しょくばらぼとは、「若者雇用促進総合サイト」「女性の活躍推進企業データベース」「両立支援のひろば」に掲載されている企業情報を求職者などに総合的・横断的に提供するウェブサイトであり、ハローワークインターネットサービスとも連携していることから、簡単な登録作業によって真剣に職探しをしている求職者などに効果的に情報提供することができます。なお、同サイトは令和6年度中に全面的なリニューアルが行われる予定であり、さらに幅広い企業情報が効果的に掲載できる方向で刷新されることが見込まれています。


職場情報総合サイト「しょくばらぼ」


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP