「個人」と「構造」に分類して要因を考察
著者・津野 香奈美
筑摩書房、定価990円(税込)
パワハラを測定する尺度、数値によるエビデンスなど学術研究の成果をベースにしながらも、勤労者の身近に即した記述で対策手段にまで踏み込んだ注目の論考だ。
学術的側面からはまず行為者の職位、性別、性格特性を分析していく。その過程では、スポーツの場以外でも攻撃性を発露する「有毒体育会系」の存在や、マキャベリアニズム・ナルシシズム・サイコパシーの3要素の高い「ダークトライアド=邪悪な性格特性」を取り上げ、管理者登用の段階でのスクリーニングを重視する。リーダーシップの分類からは、脱線型と専制型の危険性を挙げ、その上の階層が放任型であった場合が最も危ないと注意を促す。パワハラ行為の要素を個人と構造に分けて考察したうえで、組織的な対策では、気づきの研修などは幻想であり、禁止行為を明示し、文書による警告までが必要だと述べる。
上司の立場の読者に向けては「パワハラ上司にならないためにはどうすればいいのか」と題した最終章に知見を寄せ、個別配慮型リーダーシップの発揮をアドバイスしている。
(久島豊樹/HRM Magazine より)