給料が上がらない構造要因とは?
著者・浜 矩子/城 繁幸/野口悠紀雄/ほか
宝島社、定価990円(税込)
1997年をピークに日本人の平均年収が減少し続けている現象につき、序章に続けて7人の識者がインタビューに答える。
給料が上がらない理由では、各氏の専門分野それぞれに原因が指摘され、いずれの説も合点がいく。例えばマクロ経済では金融破綻以降の企業の内部留保。中小企業経営では人材難(若手に厚くする分、中高年の賃金を削減)。反対に大企業では、中高年への不利益変更ができないがゆえに、若手の昇給率が逓減されているとも説明されている。また、組合の役割では「物価上昇分をカバーしうる賃上げ」という要求根拠がデフレで希薄になった経緯に加え、組合員は「賃金カーブの維持」という前提で交渉できるが、多数の非加入者は漏れてしまう事情も明かされる。
世界に目を向ければ、必ずしも諸外国が順調に成長しているわけではなく、賃金指数が伸びている反面、物価・税金も高く、生活実感は厳しい。どの国も業種間の格差が大きいという共通点がある一方、勤続年数による昇給は日本だけに認められ、特異な社会構造も浮き彫りにされている。
(久島豊樹/HRM Magazine より)