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2024年3月 7日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」217・有料職業紹介事業における紹介手数料の取り扱い

Q 有料職業紹介事業に関する「紹介手数料」の種類と定め方について教えてください。

koiwa24.png 有料職業紹介事業の「紹介手数料」には、「上限制手数料」と「届出制手数料」の2種類があり、許可申請時に設定し届け出る必要があります。同一の事業者が取り扱う分野に応じて上限制手数料と届出制手数料を併用することは差し支えありませんが、同一の求人者に対して併用して徴収することはできません。

(1)上限制手数料
手数料の最高額を次の額として、その額の限度で徴収することができる制度です。実務上は上限制手数料を採用している事業者はほとんどなく、大部分の事業者は届出制手数料を採用しています。

①紹介した労働者に支払われた賃金額の100分の11(11.0%)に相当する額 ※免税事業者は100分の10.3(10.3%)
②同一の者に引き続き6か月を超えて雇用された場合は、6か月間の雇用に係る賃金について、紹介した労働者に支払われた賃金額の100分の11(11.0%)に相当する額 ※免税事業者は100分の10.3(10.3%)
③無期雇用契約に基づき同一の者に引き続き6か月を超えて雇用された場合は、次の(a)および(b)のうちいずれか大きい額
(a)6か月間の雇用に係る賃金について、紹介した労働者に支払われた賃金額の100分の11(11.0%)に相当する額  ※免税事業者は100分の10.3(10.3%)
(b)6か月間の雇用について、紹介した労働者に支払われた賃金額から、臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除いた額の100分の14.8(14.8%)に相当する額   ※免税事業者は100分の13.9(13.9%)


(2)届出制手数料
 厚生労働大臣にあらかじめ届け出た手数料表の額の範囲内で、徴収することができる制度であり、現状はこちらが主流となっています。

① 徴収の手続等
 求人の申し込みまたは関係雇用主(求職者の再就職を援助しようとするその求職者の雇用主または雇用主であった者をいいます。以下同じ)が雇用しており、もしくは雇用していた者の求職の申し込みを受理した以降、手数料表に基づく者から徴収することができます。手数料の額は、手数料表に基づく複数の者から徴収しようとする場合には、その合計について適用されます。

② 手数料の額
 厚生労働大臣にあらかじめ届け出た手数料表の額で徴収することができます。事業者は基本的には自由に手数料を定めることができますが、申請実務上は50%を超えて設定できない取り扱いになっています。許可申請時においては、50%までは任意の金額で設定できるところですが、平均すると30%前後の額で設定されている事業所が多いようです。

 実際に使用される手数料表のポイントについて、以下に簡単に整理します。

・求人受理時の事務費用
求人を受け付ける際に、事務費として一定額を受け取る場合は、この欄にその金額を記載しておく必要があります。この欄の手数料の負担者は、通常「求人者」となります。

・求人受理後、求人者に求職者を紹介するサービス
求人者にサービスの提供を行った際の成功報酬として一定額を受け取る場合には、この欄にその金額の限度額を、割合【%】または【定額】で記載しておく必要があります。雇用期間の定めのない労働契約や1年間を超える有期労働契約をあっせんする場合などは、「内定書、労働条件通知書等に記載された年収額○○%(または○○円)」と記載することもできます。

・求人の充足に向けた求人者に対する専門的な相談・助言サービス
通常の職業紹介サービスに加え、求人を容易に充足させるための専門的な相談や助言のサービスを求人者に行い、職業紹介が成功した際に、付加サービス分の成功報酬として一定額(加算分)を受け取る場合には、この欄にその加算分の金額の限度額を、割合【%】または定額【円】で記載しておく必要があります。この欄の手数料負担者は、通常「求人者」となります。

・消費税
消費税率の改正を考慮し、外税表記にすることをお勧めします。

 職業紹介事業者が受け取る手数料をどのように設定するかは、業務を運営していくうえで非常に重要なものです。事後的に変更することも可能ですが、事前届出の仕組み上、急な案件に対応できないことも考えられます。許可申請の時点で上記の内容を慎重に検討して、設定しておくことが大切だといえるでしょう。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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