日経平均株価(終値)が2月22日、3万9098円68銭を付け、1989年12月29日に記録した3万8915円87銭を上回った。34年ぶりの最高値更新とあって、証券会社の職場でくす玉を割って祝う様子が放映された。が、当時のファナティック(狂気じみた)なバブル景気を体感した1人として、素直に喜ぶ気にはなれない。国際競争に後れを取り、ドイツにGDPを抜かれて世界4位に"転落"した直後だけに、余計その感が強い。
証券を含む日本の金融市場は、長年、大蔵省(現財務省)の「護送船団方式」によって手厚く守られてきた。高度成長期の慢性的な資金不足で、銀行・証券業界は殿様商売。社員の給料も高く、バブル期には知人の百貨店課長が「証券会社に入った娘の1年目のボーナスが、オレより多かった。世の中、おかしい」と嘆いていた記憶がある。
自ら株高・土地高をあおり、証券会社は実質的に利回り保証する「営業特金」で企業の資金を預かり、銀行は傘下のノンバンクを通じて暴力団がらみの"バブル紳士"にまで資金を貸し込んだ。その結果はバブル崩壊後、大銀行・証券の破綻という形で現れ、経済犯罪が多発。幾つかは刑事事件にもなったが、そのまま闇に埋もれた事例も多かった。
バブルにまみれた当時の最高値に比べれば、今回の最高値には少しはまともな部分もある。しかし、バブル前の円高不況から一転、拝金主義に転じた34年前の世相を振り返ると、「歴史は繰り返す」危うさを感じてしまう。当時、「年明け90年は4万円の大台突破」と無邪気に予想した評論家やアナリストは恥をさらした。今回も同じテツを踏まないよう願うばかりだ。どう考えても今は株価を上げるより、賃金を上げる方が先決でしょう。(本)