小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」２１５・多様な正社員・無期転換ルールのモデル就業規則と解説

Ｑ 多様な正社員や無期転換ルールについてのモデル就業規則と解説が公開されたと聞きましたが、どのような内容ですか。

Ａ　少子高齢化や労働力人口の減少に拍車がかかる中で、「無期転換ルール」（有期労働契約が同一の企業で反復継続されて通算５年を超えたときに労働者の申込みによって無期労働契約に転換する制度）や、「多様な正社員制度」（昨今の就労ニーズの多様化に合わせて配置転換や転勤、仕事内容や勤務時間などの範囲が限定されている正社員）への対応が一つの解決策と考えられていますが、いずれも制度や実態が複雑にからみ合う中で、現実的・具体的な対応に苦慮する中小企業も少なくないといえます。

　必要な知識を網羅して指針となるフローや規程例を示すことで、「多様な正社員制度」や「無期転換ルール」の実務を円滑に進めるための一助となることをねらいとして、２０２４年１月、厚生労働省から「多様な正社員及び無期転換ルールに係るモデル就業規則と解説（全業種版）」が公開されました。同様のモデル就業規則と解説については、従来から小売業や飲食業にテーマを絞った冊子が公開されていましたが、今回全業種版が公開されたことで、業種をまたがる導入手順のフローやさらに具体的なモデル就業規則の条項案や解説が示されています。本冊子の内容は、以下の通りです。

　多様な正社員制度・無期転換ルールの導入手順として、

パターンＡ・人材定着を目指す「雇用期間の無期化」
パターンＢ・キャリア開発を目指す「正社員・限定正社員化」
パターンＣ・人材定着・キャリア開発を目指す「全社員の無期雇用化」

　が示されており、人材確保・定着やワーク・ライフ・バランス支援、全社員の最大活用と活躍推進など、導入目的に応じた活用方針の検討が推奨されています。

　具体的には、現状の社員区分と転換制度、今後の方針として検討している社員区分と転換制度について整理するため、以下のようなワークシートが示されていますので、「多様な正社員制度」や「無期転換ルール」をめぐる知識や実務が難しいと感じていたり、具体的な実務をめぐって課題が顕在化している場合などは、こちらに現状や今後の方針を書き込むことから課題整理、今後の具体的な方策検討に活用していきたいものです。

多様な正社員及び無期転換ルールに係るモデル就業規則と解説（全業種版）

（小岩　広宣／社会保険労務士法人ナデック　代表社員）