コラム記事一覧へ

2024年1月18日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」210・能登半島地震被災に関する対応について②

Q 能登半島地震に伴って雇用調整助成金の特例が実施されると聞きましたが、具体的にはどのような内容ですか。

koiwa24.png 令和6年能登半島地震に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主に対して、雇用調整助成金の特例措置を講じるとの発表が、1月11日、厚生労働省からありました。1月9日に岸田首相が非常災害対策本部会議で「震災の影響を受けている企業が、雇用を維持していただくことも重要。激甚災害の指定に関連して、雇用保険法の特例のほか、雇用調整助成金についても速やかに特例措置を講ずることができるよう、対応を進めてください」と指示したのを受け、武見厚労大臣が具体的な方針を示しました。かなり迅速な対応だといえるでしょう。具体的な内容は、以下の通りです。

1 要件緩和
・生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮する。
・最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とする。
・地震発生時に事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象とする。
2 計画届の事後提出を可能とする。
 通常は事前に計画届の提出が必要となるが、計画届の提出日が令和6年3月31日までの場合は、計画届を事前に提出したものとみなし、令和6年1月1日以降に開始された休業などについて遡及して助成対象となる
3 特例対象期間
 令和6年1月1日~6月30日の間に開始した休業等または出向が対象


 なお、地震に伴う「経済上の理由」とは、地震による直接的な被害そのものではなく、災害に伴う経営環境の悪化によって、事業活動が縮小して休業などを行った場合が該当し、助成金の対象となります。具体的には、取引先の地震被害のために原材料や商品等の取引ができない、交通手段の途絶により来客がない、従業員が出勤できない、物品の配送ができない、電気・水道・ガスなどの供給停止や通信の途絶により営業ができない、風評被害により観光客が減少した、施設、設備などの修理業者の手配や修理部品の調達が困難で早期の修復が不可能といった場合が該当します。

 上記の要件緩和が行われ、3月31日までは特例措置により休業実施後の事後提出も可能となり、この場合は締結日から遡及して発効させる必要があるため、「本協定書は〇年〇月〇日に遡って適用する」といった規定を置くことになります。震災に伴う事業活動への深刻な影響を打開し、雇用維持に向けての取り組みを進めるためにも、適切な活用をしていきたいものです。

令和6年能登半島地震の災害に伴う雇用調整助成金の特例措置を実施しています


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP