同質性経営陣の限界を暴く
著者・ルディー和子
日経BP/日本経済新聞出版、定価990円(税込)
単なる改善を構造改革と言い換え、数字に表れた結果が「失われた30年」だったのではないかと著者の視線は鋭く厳しい。
経営陣が先を見越した手を打てなかったのと同時に労働側も現状維持に執着してきたと振り返り、背後に認知バイアスを見つけている。特に「損失回避性」と「不確実性の回避」は遺伝子レベルで日本人に強いとの認識を示し、経営陣の現状維持バイアスは、男性中心の同質性集団に起因しているとみて男女差を検証。経営陣の半分を女性が占めていたなら巨額不正会計事件など起こりえただろうかと問う。類似の視点から、リーマン・ブラザーズの経営陣に女性が多くいたら破綻は避けられたかを探る「リーマン・シスターズ仮説」を紹介するなど興味深い推論を展開している。
同質性集団で育った人材では前例踏襲を止められずリーダーの器になりにくいとバッサリ。外部プロ経営者が注目されるのは"内部素人経営者"の存在を証明していると、いずれも指摘はごもっともだが、著者自身は「怖いもの見たさで楽しんで読んで」と自薦している。
(久島豊樹/HRM Magazine より)